劇場公開日 2025年2月28日

「国民より国の都合が優先される社会ってほんと最悪」TATAMI おきらくさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0国民より国の都合が優先される社会ってほんと最悪

2025年3月5日
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日本政府が映画の中に出てくるような行動を実際に取るとは考えにくいが、最近同じイランが舞台の映画『聖なるイチジクの種』を観ていたので、確かにイラン政府ならこんなことしそうと思えた。
国民が国外脱出を考えないといけない国って酷すぎる。
映画を観終わって「イランに生まれなくて良かった」と思ってしまった。

「負けると全てを失う」という話はよくある気がするが、「勝つと全てを失う」話は珍しいと思った。

この映画自体は実際にあった出来事を基にしたフィクションとのこと。
どこまでが本当のことでどこからが創作なのかは分からないが、話に納得できないところが多々あった。

イラン政府の行動がとにかくお粗末。

まず根本的に思ったのは、「自国の選手がイスラエルの選手と戦うのは好ましくないから試合を棄権しろ」とのことだが、それは試合当日ではなく、もっと事前に伝えるべきでは?
優勝を目指して人生の大半を練習につぎ込んできた選手に、試合直前になって「棄権しろ」と言ったって、納得せずに反発される可能性、高いでしょ。
イスラエルの選手と試合になったら棄権するように大会前に約束させて、それに納得した選手だけ試合に派遣すればよかったのでは?

仮に試合当日にそれを伝えるにしても、イスラエルの選手と戦う試合(この映画だとその可能性があるのは決勝戦)を棄権すればよくて、なんでそれよりもっと前の試合を棄権させたがっているのかも意味がわからなかった。
選手自身やイスラエルの選手が決勝まで進む保証はないはずなのに。
それならそもそも試合に選手を派遣しなければよかったのでは?と思った。

その一方で、選手の家族をいつでも拉致できるように家の近くに特殊部隊が待機してたり、会場に政府関係者を忍び込ませていたり、棄権に応じなかった時の脅迫する準備だけは異常に用意周到。
努力の方向性が間違ってると思う。

あとこの映画で気になったのは試合の実況。
柔道の試合っていつ勝負が決まってもおかしくないと思うが、選手が戦っている時に、実況が選手の監督の生い立ちを永遠と説明してて違和感。
実況が映画の補足説明として機能していて、実況としてはリアルに思えなかった。

試合シーン自体も淡々と進んで単調に感じた。

昔の話だからモノクロ画面にしているのだろうけど、この映画のモノクロ画面は眠気を誘う原因の一つになっていた。

脚本がダメだからなのか実際のイラン政府がダメだからなのかは分からないが、個人的には映画としてはイマイチだった。

代表チームの女性監督がイラン上層部から電話で棄権するように命じられた後、電話を切ってすぐに何か言葉を発するが、字幕だと「馬鹿」と表示されていて、音声でも女性監督が「ばーか」と言っているように聞こえたのは気のせい?

おきらく