劇場公開日 2024年12月13日

「諸刃の剣 協調性と同調圧力」小学校 それは小さな社会 レントさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0諸刃の剣 協調性と同調圧力

2025年2月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

知的

日本の小学校で行われてるTOKKATSU(特別活動)が海外で注目を集めているという。本作にも出演なされた国学院大学教授の杉田洋教授が現在エジプトで特別活動導入の指導をなされている。

本作の舞台となる塚戸小学校でもこの特別活動を通して成長する子供たち生徒と教師の姿が描かれている。
特別活動とは何のことかと思いきや何のことはない。我々がやはり小学生の時に普通にしていた教室の掃除当番やら、給食当番やら、保険係などなど、クラスの中でそれぞれ役割を決めて自分が任されたことをすることだ。その活動を通してコミュニティ内での自分の役割を認識して自分が役に立てたことに自信を持てるようになり、コミュニティにも役立つというまさに個人と集団に対して相乗効果を生み出す仕組みだ。
集団生活の中でルールを学び協調性を身につけ、そしてその集団の中で自主性を育んでいく。集団とのかかわりを通して自分は何者なのか自己確立を目指す。

この点は欧米などとは違い、向こうは先ずは自主性を芽生えさせる、自己確立を促してからルールを学ばせ協調性を身に着けさせる。主体性、協調性共に重要だがどちらに重点を置くかで子供の成長の仕方も変わってくる。
日本人は協調性を重んじるばかりに集団内での空気を読みすぎて自己主張が苦手だと言われる。逆に欧米で育つと帰国子女なんかが自己主張が強すぎて日本の学校のクラスで浮いてしまうなんてことがよくある。
確かに協調性ばかりを重んじればそれは同調圧力にもなりうる。杉田教授は講演で日本の教育は協調性を学ばせる点で海外からの評価が高いと言われるが、ルールを重んじるあまりルールからはみ出す子供が排除されてしまう危険性もあると指摘する。いわゆるいじめなどにもつながりやすいということだ。だからこそこの教育は諸刃の剣なんだということを肝に銘じてほしいと話された。
確かに海外から評価されている日本の特別活動。しかし常に時代の移り変わりを通してどう子供たちと向き合っていくべきか常に模索し続けなければならないのだという。教育者としてけして現状に甘んじていてはいけないのだという杉田氏の言葉だった。

現場の教師たちにも同じ姿勢が見られた。若い教師が何人か出てくるが、彼らはまだまだ経験が浅く日々自問自答しながら子供たち生徒と向き合っている。自分は厳しすぎやしないか、今のは怒るべきだっただろうか。常に試行錯誤を続け、けして現状に満足せず生徒を通して学んでいこうとする姿勢が見受けられる。
学校は学びの場だ。子供たち生徒だけではなく、大人たち教師にとっても。先生は読んで字のごとく先に生まれたに過ぎない。先生も生徒を通して教師たるものを学んでいく。

集団内での自分の役割を与えて集団に貢献できることを学ばせ自分が役に立てる存在だと自覚させることで子供に自尊心が生まれる。縄跳びが苦手な生徒も、楽器の練習に自信が持てなかった生徒も教師がサポートするなりして目標達成につなげて自信をつけさせる。
そうして自分は社会で役に立つ存在だと自覚させる。自分は社会の中で尊い存在なのだと。そして実際社会にも役立つ人間へと育っていく。
社会で生きていくにはとても大切なことを幼いころから学ばせるTOKKATSUが世界的に注目を浴びるはずである。

いつも行くミニシアターには珍しく子連れの観客が目立った。みな小学生くらいだ。感心したのは鑑賞中誰一人私語もせず行儀よく鑑賞していたことだ。さすがである。

レント
NOBUさんのコメント
2025年2月18日

今晩は。
 コメントありがとうございます。
 靴箱の整頓状況チェックのシーンは、私は好きではなかったですね。あんなことをやっていたかなあ?と思ってしまいました。けれども、この映画を観て、日本の小学校での6年間の生活は確かに、日本人としての人種形成には影響しているなあ、と思いましたね。では。

NOBU