「クライマックスのパートナーへの想い、優しさが心に染みますね」ロボット・ドリームズ 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)
クライマックスのパートナーへの想い、優しさが心に染みますね
記念すべき2025年の1本目は、周囲の誰もが大絶賛の『ロボット・ドリームズ』をヒューマントラストシネマ渋谷さんにて鑑賞。
(ネタバレあり)
『ロボット・ドリームズ』(2023)
第96回アカデミー賞長編アニメーション映画賞ノミネート(受賞作は宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』)はじめ海外の名だたる映画祭で高く評価された作品。
事前の予備知識ゼロ、犬とロボットのポップなポスタービジュアルから子ども向けのカートゥーンアニメと高を括っていましたが然に非ず、人間の誰も抱く、孤独、友情、恋愛、別れ、他者への想い、労わりを擬人化された動物やロボットを通じて優しく丁寧に描いた大人向けの絵本のようなハートフルな傑作でしたね。
ナレーションやセリフは一切ありませんが、キャラクターたちの表情や仕草だけで心の機微が伝わり、背景も80年代のまさにポップなニューヨークの街並みやカルチャーシーンを精巧に再現、作中に何度もかかるアース・ウィンド・アンド・ファイアーの「セプテンバー」(September)が効果的に使われていましたね。
作品設定上は孤独な犬が友達用のロボットを購入、ロボットとの出会いと別れを描いた友情ドラマが「正解」かもしれませんが、ロボットの性別を曖昧にしているため、男女やLGBTQのラブストーリーと解釈しても全く違和感はありませんね。
互いに不運が重なり意図せず別れ別れになった二人が、別々の道を歩みながら互いに幸せをつかみ、数年後偶然再会をする機会が訪れる…普遍的なストーリーですが、二人の過ごした時間を丁寧に描いているため、クライマックスのパートナーへの想い、優しさが心に染みますね。そして流れる「セプテンバー」の「Do you remember/覚えているかい?」の歌詞。
本作が実写で映画化されたら、もっと過剰なほど激情な演出になるはずですが、カートゥーンアニメを採用することで、切なく温かな作品に仕上がったのでしょうね。
正月早々涙腺崩壊でした…。