「犬とロボットの尊い友情にホロリ」ロボット・ドリームズ ありのさんの映画レビュー(感想・評価)
犬とロボットの尊い友情にホロリ
同名のグラフィックノベル(未読)を「ブランカニエベス」のパブロ・ベルヘルが監督した作品である。
「ブランカニエベス」もモノクロの美しい映像の作品だったが、こうしたグラフィカルなセンスは元々持っていたのだろう。初のアニメ作品ということだが、中々どうして。ディズニーや日本のアニメとはまた違った味わいのある作品になっている。
まず、動物だけが暮らす独特の世界観が面白い。昨今ではディズニー製作の「ズートピア」という作品もあったが、これは物語に寓話性を持たせるという意味では大変効果的なように思う。人間臭い生々しさがない分、ある種御伽噺のように素直な気持ちで鑑賞することが出来た。
キャラクターや美術、デザイン全般がシンプルにまとめられており、映像から朴訥とした雰囲気が感じられるのも良かった。ドラマ自体は友情をテーマにした割とベタなものなので、これくらい抑制されているとすんなりと入ってくる。これがリアルな映像だったりしたら、かえって鬱陶しく感じられてダメだったろう。そういう意味では、この映像も好き嫌いはあるのかもしれないが、作品のテーマには丁度合っているように思った。
音楽の使い方も中々心憎い。劇中ではセリフは一切なく、代わりに音楽がキャラクターの心情吐露、あるいは展開の緩急やリズムを上手く紡いでいる。
中でも、アース・ウインド&ファイアーの名曲「セプテンバー」はドッグとロボットの友情を象徴するアンセムであり、見事にテーマを抽出するに至っている。
他にも、地下鉄にはドラムをたたくタコのミュージシャンがいたり、ロボットが見る夢がミュージカル仕立てになっていたり、BGMを含め音楽全般が良い役割を果たしている。
また、動物だけが暮らす街とはいえ、外観は明らかに1980年代のマンハッタンである。背景には当時興隆していたヒップホップカルチャーなども反映されていて、このあたりにも細かいこだわりが感じられた。
ちなみに、雑誌の表紙で一瞬だけ往年のテレビドラマ「アルフ」のようなジャケットが見えて嬉しくなった。この作品も80年代を代表するシットコムである。
思えば、「ブランカニエベス」もセリフがない映画で、音楽が重要な役割を果たしていた。ベルヘル監督にとって、音楽はセリフよりも重要な意味を持つものと考えられているのかもしれない。
そんな音楽と映像至上主義的演出が一際目立つのが、タイトルにもあるロボットが見る一連の”夢”のシーンである。とりわけ、終盤の”夢”はドラマに見事なツイストを創り出しており、技ありという気がした。
一方で、ロボットを失ったドッグが寂しさを紛らそうと他者と積極的に繋がりを持とうと奮闘するクダリには、アニメでありながら妙なリアルさを感じた。愛を知らずに生きてきたドッグが愛を知り、愛を求めるという、どこか人間臭い行動は、対するロボットの”夢”がなまじテンポが良い分、若干間延びして見えたのも事実である。