「ドッグ・ドリームズ」ロボット・ドリームズ 恍惚のヒーローさんの映画レビュー(感想・評価)
ドッグ・ドリームズ
今年観た映画の中でもほんとに好きな1本なんですが、一方で主人公のドッグのパートナーとなるロボットが金で売買されていることに抵抗や疑問を覚える方も結構いらっしゃるようで、確かにそのあたりは捉え方によっては「これはどうなんだ」と思わされなくもない。
ただ、それ以外のところで自分が観ていてなんとなく引っかかったのは、これが「独り者」の存在がどこかで無視されていることだったんですよね。
冒頭では独りで寂しそうだったドッグは、ロボットとの出会い以降は常に誰かと一緒に生活することで孤独を克服していく。逆に言うと、「ぼっち」でいることは哀しい状態だという前提でお話が進んでいく。
自分以外の誰かとつながることの大切さ─それは切実なものだし、実際この作品が発している大切なメッセージではあるんだけれど、しかしもし、これをドッグが部屋に飾っていたオモチャの人形たちを「イマジナリー彼女(もしくは彼氏)」と見立てて彼自身が想像した物語として見たらどうだろう。
突然まったく別のせつなさに襲われるのではないか。
何かのきっかけで手放すことになったお気に入りの人形が別の誰かの手に渡り、今では大切にされている。新しいオモチャと楽しい時間を過ごしながら、かつて一緒に遊んだ「パートナー」とお別れする。
…「独り者」を排除するような話だったこの『ロボット・ドリームズ』が、実はロボットが見た夢…を想像しながら今日もオモチャの人形と一緒に過ごす男の「ドッグ・ドリームズ」だったのなら。
もちろん、これもまた街の片隅に生きる「独り者」の単なる想像に過ぎませんが。
この映画の登場人物たちや彼らの互いの関係性には、ちょうど「トイ・ストーリー」シリーズがそうであるようにさまざまな意味付けが可能だから、こういう解釈もまたありなのではないかと思います。
今夜はクリスマスイヴですが、カップルもお一人様も、誰もが温かい気持ちになれる(そしてしたたかに酔いたい気分にもなる)、そんな1本でした。