「愛玩的主従関係の先にあるのは、移行対象の変更いうのが物悲しくもある」ロボット・ドリームズ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
愛玩的主従関係の先にあるのは、移行対象の変更いうのが物悲しくもある
2024.12.12 アップリンク京都
2023年のスペイン&フランスのアニメーション映画(102分、G)
原作はサラ・バロンの同名グラフィックノベル
孤独に悩むドッグと友だちロボットの交流を描いたヒューマンドラマ
監督&脚本はパブロ・ベルハル
物語の舞台は、1980年代のニューヨーク州マンハッタン
一人暮らしをしているドッグは、日々を孤独に悩み、向かいのビルのカップルや家族連れを羨ましく眺めていた
ある日のこと、「Amica2000」という友だちロボットのCMに心を奪われたロボットは、即座にそれを購入することになった
ロボットを組み立てたドッグは、彼と一緒に街を繰り出し、これまでにできなかったことをし始める
そして、コニーアイランドのビーチに赴き、海に入って大いにはしゃぐことになった
遊び疲れた二人が砂浜でうたた寝していると、いつの間にか日は暮れて、誰もいなくなっていた
帰ろうとする二人だったが、なぜかロボットは手足を動かせず、重すぎてドッグの手にも負えなくなってしまう
助けを呼ぼうにも誰もおらず、ドッグは翌日修理道具を持って、ロボットを助けにこようと考えるのである
映画は、海開きが終わって砂浜に入れなくなったドッグを描き、無断で侵入して逮捕される場面などを描いていく
救出を断念せざるを得なくなり、翌年に救出にいくことを決めるのだが、ロボットを失った喪失感が彼を思わぬ方向へと導いていく
スノーマンと一緒にボウリングに行ったり、ダックと仲良くなったりするものの、なかなかうまくはいかない
一方その頃、動けないロボットは小鳥と一緒に飛んだり、コスモスと踊ったりする夢を見ながら、常にドッグとの楽しい日々を模索しようと考えるのである
物語はそこまで難しくなく、孤独を癒したいドッグがロボットとの喪失を乗り越えて、新しいパートナーを得るという流れになっていた
それは、翌年の海開きにてロボットが忽然と姿を消したからであり、ドッグはもうロボットとは会えないと思い込んでいた
そして、新しい友だちロボット・ティンを手に入れることで、ロボットの代用を試みるという流れになっていく
だが、ロボットはウサギ三人組に足を奪われたり、スクラップ工場で粉々にされたりする中で、最終的にはラスカルというアライグマに拾ってもらうことになった
ラスカルはロボットの頭と手足をラジカセに繋いで復活させる
動けるようになったロボットは、偶然ドッグの姿を見かけることになったのだが、感動的な二人の再会を妄想で終わらせてしまう
そして、新たなパートナーと共に、未来を生きていくことを選ぶのである
映画に登場するロボットはある種のメタファーなようなもので、映画のタイトルが示す通り、離れ離れになって動けなくなったロボットがどんな夢を見ているか、というのが主題になっていると言える
ロボットは小鳥を気遣い、花を気遣いながらも、ドッグのことも気遣っている
だが、ドッグの方は、ロボットと再会するまでの1年間の孤独にすら耐えられず、別の何かで埋め合わせをしようとする
もし、彼が毎日のようにロボットのもとを訪れていれば、彼との永遠の別れはなかったようにも思える
愛玩的な存在以上には考えていなかったことで、代用品という考えが生まれ、自分に都合の良い存在にたどり着いた、という感じに描かれていた
これを残酷と取るかは人次第だが、初動からドッグは何一つ変わっていないので、必然の帰結のようにも思えた
いずれにせよ、かなり残酷な話であり、共感性もありながら、どうして二人が別れなければならないのかとも考えてしまう
ドッグはできること全てをしたのかという疑問も湧くし、彼がロボットを思うのであれば、警備員が根負けするぐらい通い詰めても良かったと思う
彼の行動は他の誰かを動かすには至らず、自己完結的なところで終わっているのが難点で、もう少しの努力と思いがあれば変わっていたのかな、と感じた