劇場公開日 2024年11月8日

「ひと時の夢の余韻」ロボット・ドリームズ sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ひと時の夢の余韻

2024年12月7日
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鑑賞方法:映画館

「ロボットの夢」とは、ロボットが夢見ることなのか、ロボットが眠りについてみる夢なのか、はたまた、ロボットのことを夢にまでみることなのか。
「そんな問いは、無意味だよ」とばかりに、そのすべてが出てきた上に、「ロボットとドッグにまつわるひと時の夢」のような余韻を残す映画だった。

ちょっと自分語りをすると、突然動けなくなってしまうロボットって、突然の体調不良で入院を余儀なくされた自分自身に重なった。
思うように身体が動かない。ほとんどすべての時間、天井を眺めているしかない。視野が限られているから、周りの状況もつかめない。夢に見るのは、自由に動けた頃の自分自身。
そうした状況を自分だけの力ではどうすることもできなくて、誰かに(自分の場合はドクターやナースに)頼るしかないのだけれど、でも心底までの絶望とかはなくて、心の中は意外とポジティブ。というのも、いつかはよくなるという「夢見る力」が、何となく自分にはあったから。
砂浜で横になっているロボットも、イエローブリックロードをたどりながら、エメラルドシティを目指す夢をみながら、きっとそういう気持ちだったんじゃないだろうか。

それから、この映画って、省かれているものが実はポイントなのでは…とも思った。
セリフはない。ドッグの生業や家庭環境もわからない。時代背景も説明されない。ビデオゲームはレトロだし、カセットテープが全盛なのにロボットだけはすさまじくハイテクな理由もわからない…。
こうやって上げていけば、まだまだキリが無さそうだが、実は、自分を取り巻く世界って、案外そんなもんじゃないだろうかとも思うのだ。
自分にとって関心がある範囲なんて限られていて、自分に関わる世界はそんなに広くない。
だから、そこで深く関わった人や出来事とは離れ難くなるし、思い入れも生まれる。
けれど、いつまでもそこに留まり続けることは出来なくて、人生は否が応でも続いていく。

ラストなど、そこがとてもスマートに描かれていると思うし、この映画で省かれていて、最高最大にグッジョブなのは、自分は登場人物たちの「涙」だと思った。

EWFのセプテンバーの使い方の心憎さと、絵柄の温かみも◎。

sow_miya