「ストーリーは深く考えずに見てください」ロボット・ドリームズ クックーさんの映画レビュー(感想・評価)
ストーリーは深く考えずに見てください
単館系の海外長編アニメが話題になっているという前情報だけで見に行きました。
(予告編などの前情報など一切仕入れずセプテンバーがテーマ曲として使われてることも知らず)
海外映画なのに字幕とか吹替えとかの区別がないな?と思っていたら無声映画と気付いたのは始まって10分くらいしてからで、その後も、あ、これNY(それも40年くらい前の)が舞台なんだとか見ながら理解していく過程は楽しかったですし、作画のセンスや見せ方も非常に良かったです。
犬とロボットが手を繋いでいるキービジュアルくらいはさすがに知っていたので、
この二人の友情(あるいは愛情)物語なんだろうなぁと思って見てたら、
出会ってから親愛度MAXになるまでのスピード感がすごいですね。
結果的には別離のシーンを描くことが主題であるから、人と人(?)が仲良くなる過程に理屈なんていらないよ!という割り切りなんだろうなとは思いました。
この辺は日本的なセンスでは無いところなので海外作品の面白さとも言えるかもしれません。
犬とロボットというのもあくまで寓話的なものであって特に仕組みや社会背景を気にするようなものでもありません。単純に大都会で一人で暮らす寂しい人が(手段はともかく)親しい友人(家族)を作った。ということが理解できればそれでよい作りです。頭空っぽで見ましょう。
さて、ここまではきっと前情報だけでも得られる内容だと思いますが、
ここから先に踏み込みます。まだ見てない人は見てからにしてください。
犬さんがやむなくロボットと別れた後ですね。
正直この辺の描写は社会経験が長い人ほど引っかかるというか受け入れ難い流れが続きます。
遊びにでかけたビーチで故障してやむなくロボットを(一旦)置いて帰った後ビーチは閉鎖されてしまい救出不可能に、不法侵入などを試みたものの逮捕、正規の手続きを申請するも却下。
やむなく来シーズンまで救出を諦める。(来シーズンに助けることを決意する)
ここまでは良いとして、寂しさの穴埋めに公園で出会った女性と遊んだり、スキーツアーで友達作りに励んだり、段々と日々の生活の中でロボットの比重が下がり埋没していきます。
この辺はまぁ確かに人ってどんなに固い決意をしても期間が空くと生活の中でだんだん薄れていってしまうものだよねという人間臭さとして理解はできます。
でも少なくともマンハッタンで自活できるくらいの生活基盤があるなら
もう少しやれることあったんじゃないの?とも思ってしまいます。
もう少し粘って方法を模索できたんじゃないか?とか、ビーチに入れないまでも定期的に様子見に来るくらいできるよね?とか。
この後普通に海側からビーチに侵入(避難)する人たちや鉄くず集めをする人がいるのでなおさら。
犬さんの中でロボットがどれだけ大事だったのかがわからなくなってくる。
そして決定的に理解し難いのが、結局行方不明になってしまったロボットは諦めて代わりのロボットを買ってしまうところ。
んーそこは諦めるにしても思い出を胸に人との交流頑張ろうとかそっちの方向に舵を切るべきなのではないか????
結局代替手段に逃げるなら初代ロボット君への思いって何だったのさ???と思ってしまいました。
もちろんこの犬さんがあまりにも薄情だとは思わないです。ただただ人間臭いだけだと思います。
失ったものにいつまでも執着しない、(しても幸せになれない)みたいなことは大事な心掛けだと思います。(とかく日本人はその気質が強いですし)
それぞれが幸せに向かって日々生きるという前向きなメッセージは理解できます。
メッセージが届きさえすればウジウジした部分を長々描かないという割り切りも前半感じた文化の違いかもしれません。
ただタイトルの通りロボットの夢を中心に身動きの取れないロボット側の犬への恋慕や憧憬がいっぱい描かれるので、その裏でなんだかんだ人生楽しんでる犬はなんなんだよと思わなくもないです。(笑)
そんなこんなで紆余曲折あって、ラスカルの新しい家庭に着いたロボットは
犬さんへの未練を残しつつもそれぞれの生活が既に出来上がってしまった以上、干渉しないという決意をします。ここの演出はすごく良かったです。(上に書いたそれまでの経緯から切り離して見たらですが)
気分上々のセプテンバーがこんなに切ない流れで奏でられるシーンはとても新鮮です。
総じてテンポや画作り、作品全体はとても良いと思います。
ただ人と人の出会いと別れの寓話として見ると、正直ロボットを買い替えてしまう流れが非常にノイズです。別の人も書いてましたが、ロボットは人というよりペットの暗喩の方が近いような気がします。
んーでもセプテンバーの歌詞が着想だとすると恋愛劇として見るべきなのか。。。でも恋愛劇として見たら犬は薄情すぎるよなぁ。。。みたいなモヤモヤのループに陥ります。
まぁその辺の受け取り方も人それぞれであっていいという作りなので深く考えない方がいいです。
ここまで書いた評価は穿った大人の視点で見た評価であって、人生悲喜こもごもをライトに伝えるものとしてはちょうどいいんじゃないかなと思います。
感性の強い若年層が見る分にはすごく良いと思います。
あるいは細かいことは気にせず頭空っぽで見ればいいやと割り切れる人なら十分楽しいです。ストーリーの深さではなく、あくまでもアニメーション表現に重きを置いた作品です。
幕切れとしてはビターエンドですが、やっぱりセプテンバーの曲調のおかげか人生前向きに生きようと思えるパワーがあります。