「80年代(と思われる)ニューヨーク。 ひとりぼっちの犬ドッグは、あ...」ロボット・ドリームズ りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
80年代(と思われる)ニューヨーク。 ひとりぼっちの犬ドッグは、あ...
80年代(と思われる)ニューヨーク。
ひとりぼっちの犬ドッグは、ある夜、テレビで組み立て式ロボットのCMをみる。
「これは!」と感じたドッグは、早速購入。
組み立てて、どこへ出かけるのも一緒。
なにせ、自律式なもので。
公園でのスケートダンスなど楽しい。
で、夏の終わりの9月21日、コニーアイランドの浜辺に出かけたが、潮風・海水の影響でロボットは動けなくなってしまった。
仕方なくロボットを置き去りにして、翌日、修理道具や手引書をもって、ロボット救出に向かったが、浜辺は閉鎖されていた・・・
といったところからはじまる物語。
その後、どうにかして浜辺に忍び込もうとするも、困難続出で断念。
来夏の浜辺開きまで待たなければならなくなってしまったドッグ・・・
と展開するので、まぁ、最終的にはドッグとロボットは再会して友情を深めるよね、と予測・期待して観るよね。
なんだけれど、そうは問屋が卸さないあたりが、ヨーロッパの映画。
置き去りのロボットは、いくつかの夢を見る。
アンドロイドは電気羊の夢を見る、ではないが、組み立てロボットは友だちドッグの夢を見る。
元気に動けるようになって、ドッグのアパートまで出かけるが、ドッグと再会できない・・・とかのあまり喜ばしくないバリエーション。
ただし、『お図の魔法使』もどきや、バズビー・バークレイのレビュウ風だったりと、一見楽しげなのだが。
一方、来夏まで待つと決めたドッグは、それでも寂しさを埋めることが出来ず、新しい友だちを求めて、スキーやカイトなどに挑戦。
何人かと知り合うが、いい人ばかりではない。
いい人もいたが、彼女は彼女なりの人生を歩んで、ドッグから去ってしまう。
と、楽し気なアニメーション表現とは裏腹にビターな物語。
このビターさ、もう老境にさしかかる年代になったのでよくわかるけど、世知辛いつらい毎日で苦闘している若い人たちには、もしかしたら耐えられないかも。
ラストは現実世界に足を踏みしめた結末。
形としての友情は途切れてしまったが、気持ちとしての友情は永遠に続いている・・・
台詞を排してのアニメーション表現で魅せる出色の映画。
大切にしたい掌中の一編でした。
なお、観終わったら、しばらくはEW&Fの「セプテンバー」を鼻歌で歌いたくなること必至。