劇場公開日 2024年11月8日

「過去は失敗じゃない」ロボット・ドリームズ サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5過去は失敗じゃない

2024年11月16日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

興奮

幸せ

ぐわぁぁぁぁああ......。
セリフ無しでこんなにも心をえぐってしまうのかぁぁぁ....😭挑戦的なことするなぁと思ってたけど、ここまですごい映画になるとは。見せるメッセージ。本当に大切なことは、言葉にしなくても、心で伝わる。新解釈・September。洋楽でいっちばん好きなこの曲が、こんな形で映像化されるとは思ってもみなかった。
めちゃくちゃに食らってしまったんだけど、お涙頂戴的な展開にも、無駄に泣かせるような作りにもなっていないのが最高にいい。あぁ、全てがいい。グダグダ言う前に一言。キミ(本作)のことが好きだぁぁぁぁあああ.....!!!!

もうね、何が好きかって、これ完全に自分のための映画だったんだよね。共感の嵐。鼓動の暴走。感情の波の氾濫。うわうわうわ、あったあったこんなこと。え、今までの自分監視されてた?世界中の人、自分と似た経験たくさんしてるんだな。
有難いことにいまは何の不自由もない、幸せハッピーな日々を送っているんだけど、もし自分が困難にぶつかったり、大きすぎる壁が立ちはだかったりした時にこの映画を見たら、あ自分はひとりじゃないんだとすごく勇気づけられると思うし、間違っていないんだと心を落ち着けることが出来ると思う。大袈裟じゃなくて、ホントに。今後、この映画は自分の心の中に残り、寄り添い続けてくれるだろうし、いざという時は居場所になってくれると思う。

世の中にはいろんなひとがいるし、この映画においても個性豊かなキャラがたくさん出てくるけど、やっぱり自分は主人公のワンちゃんに大共感してしまったし、もはや鏡越しの自分にしか見えなかった。魚釣りのシーンなんかヤバい。ふと魚に感情移入したとき、あれ、いま何やってんだろうと我に返って、ものすごく心が苦しくなって、そっと今までいた場所に返してあげる。
釣りだけに限らない。別に偽善者ぶってるわけではないし釣りが好きな人を否定しているわけじゃないけど、客観視した途端いまとんでもないことしてると罪悪感に苛まれて、その場を逃げたくなること、これまでの人生に何度もあった。こんな矛盾した感情自分だけだと思っていたけど、全く同じ心を持った人物にこんな形で出会うなんて、そしてこの映画を通してこんなにもたくさんの人がいるなんて、驚きだった。同時に、なんだか救われた気分になった。

いやーでもね、すっごいわかるよぉ〜。(誰)人生で一度は、自分の先を行く、前を歩く人に憧れて好きになってしまうし、いまでも何気なーくそういう人のことを思い出してしまう。好きと尊敬は結びつくことが多く、尊敬の意のカッコイイ!は恋愛感情に発展しやすい。アイドルを好きになるのも同じこと。
でもね、自分の前を行ってるということは、自分はその人のことを追いかけ続けなければならないわけで、相当の気合と根性が必要になるのよ。それってやっぱりめちゃくちゃキツくて、どうしても性格や価値観の違いが生まれてくるし、いつか追いつかず、相手が遠く先に行ってしまうことがほとんど。一方で、同じ歩幅で、同じ並びで歩いているロボットは、人生を共にしたい最高の相手なんだよね☺️

September。この言葉がこんなにも情緒深いと思えたのはこれが初めて。
夏の終わりであるこの月は、心にぽっかり穴が空いたような、どこか寂しい気持ちになる不思議な期間。暑いのは大嫌いだけど、過ぎ去ったら少し寂しい。失って気付く、あの時の思い出。夏の一時を共にしたあの人との会話や出来事を思い出すワンちゃん。そして、同様にあの頃の平穏な日々を振り返るロボット。そんな彼らの頭の中を覗いているような作りになっている。そう。過去を振り返る時って、楽しかったことよりも、辛かったり悲しかったことの方が鮮明に覚えているもので、夏の終わりと同じように、思い出した時すごく虚しく心が痛くなってしまう。

それでも、過去は失敗でもなんでもなくて、いまの自分があるのは間違いなく過去の自分がいたから。笑い話や最悪の思い出だとして、他人に伝えて消化しがちだけど、過ちを犯しても間違った選択をしたとしても、それは必ず自身の経験として積み重なるし、いまの自分を形成する、大事な要素となる。
だからこそ、前を向いて歩みを進めたり、時には立ち止まって周りを見渡してみたりすることで、新たな出会いが生まれて、過去が生きる場面が突如として現れる。頑張りすぎな今を生きる全ての人々に送る、最高に暖かいエール。いまを大切にしよう。ものすごくシンプルだけど、ここまで強くそのことを感じたのは、未だかつて無い"経験"だった。

アニメーション、音楽、演出、構成、色彩などなど、色んな要素が完璧に合致しているものすごい映画だけど、脚本が良すぎてそこまで語りきれない。その先に込められた強いメッセージに心がぐちゃぐちゃになるほど響いてしまった。
追うもの、追われるもの。待つもの、待たれるもの。思い通りにいかないのが人生で、それにもがき、苦しみ、辛く悲しい思いを抱くのも人生。でも、そんなことがあるからこそ、前を向いて歩いていきたい。時には振り返ってもいい。後ろに見えるのは過ぎ去ったものではなく、自分がここに至るまでの道のりなんだから。

サプライズ