「ぬくもりに満ちた映画の魔法に包まれる愛着と親近感」ロボット・ドリームズ とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
ぬくもりに満ちた映画の魔法に包まれる愛着と親近感
孤独を知るすべての人へ贈りたい切なくも心温まる傑作。そうした、現代社会とりわけ大都会におけるそれ。季節の流れを感じ四季折々丁寧に綴られる生活模様と、セリフがない分も重要な役割を果たす音楽が印象的・効果的に使われては作品を彩る、魔法のような102分に恋する。また人生で大切にしたい作品に出逢えたかけがえのなさ。
本作は単なる友情モノである以上に、(手をつなぐというモチーフや助けようとするシーンなどに象徴されるように)80年代ゲイカップルのラブストーリーである。ただ、それでも深い部分で他人事じゃないように感じられた。どうしようもなく押し寄せてくる寂しさ、愛され方もわからず世界にたった一人このまま誰にも愛されることなくただ日々が虚しく流れすぎていくのではないかという漠然とした恐怖…。たとえ誰かと親しくなれたって、不器用に献身的な自分なんて他の人と替えのきく代替品のような存在でしかない、と。流石によすぎてこれは言葉にできないし、引きずる。
ベタ塗りでも奥行きの感じる画作りに、美しく素晴らしいアニメーションと素敵なドラマ。実写もアニメも関係なく、監督の演出が心に沁み渡ってはいつまでも反芻するように残る。しっかりと作り手の温度と制作意図を感じる。胸締め付けられて、最後は突然自分の中で何かが爆発したように、嗚咽するくらい大号泣してしまった…。
♪September
セプテンバーの使い方が最初は(温かな感じはもちろんありつつ)純粋に盛り上がれる曲として流れているのが、話が進んで再び流れるときには歌詞の内容にマッチした切ないものになっているのが効果的で、すごく良かった。だから入場特典がカレンダーなのも納得頷ける。『オズの魔法使』のブリキ男tin manでもあるロボット。
言葉を必要としない映像表現の賜物。ここには『裏窓』のような都会の孤独も、『トイ・ストーリー』が作品を追うごとに描いたオモチャ(玩具=人間以外のもの)との別れも、『ラースと、その彼女』や『her』のように人間以外のものに対する恋愛も、『ブロークバック・マウンテン』のような障壁の多い無理解な時代における愛する相手をせっかく見つけても離れ離れになる不在期間も、そのすべてがある。
勝手に関連作品『オズの魔法使』『トイ・ストーリー(2, 3)』『ラースと、その彼女』『her』『スノーマン』『裏窓』『パスト・ライブス』『ブロークバック・マウンテン』『ロスト・イン・トランスレーション』『最強のふたり』