「思春期心理の残酷さと悲哀」ゴールド・ボーイ bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
思春期心理の残酷さと悲哀
中国の人気小説を、金子修介がメガホンを撮って映画化した、究極のクライム・サスペンス。当初は、東野圭吾の『白夜行』の様な純情悲恋な展開かと思いきや、その予想は、とんでもない方向で覆された。きっと、日本の小説では、ここまで冷徹なあの殺人者を仕立てたサスペンスを描くことは難しいだろう。このリビューも、うかつなことを書くと、即ネタバレになってしまい、どうレビューしてよいのか迷うところ。
家庭環境の劣悪さ、苛め、両親の離婚等の犠牲となるのは、常に子供。本作で描かれた一連の事件の根底には、こうした現代社会の歪や問題が流れているのだろう。そこに、思春期の中に存在する、残酷さや悲哀と、大人の傲慢や欲望が重なった時、とてつもない事件へと導かれていった本作。久しぶりに、落としところが無い、イヤミスな作品と出会った。しかも、クレジットロール後に『ゴールドボーイ 2』製作の思わせぶりシーンも盛り込まれ、これ以上、何を描くのだろうとさえ思った。
冒頭、大企業実業家の娘婿・東昇が、義父母を崖から突き落とすシーンから始まる。それを事故死として、悲しむ遺族を演じた昇だが、昇の妻・静は昇に殺されたと従妹の刑事に相談するが、相手にされない。しかし、その現場近くに居合わせた3人の中学生が、記念撮影していた動画に偶然にも殺人事件が映し出されていた。それぞれに苦境な家庭に育った3人は、その動画を元に、昇から金を脅し取ること目論む。しかし、その結果は、思わぬ悲劇と新たなる殺人事件とへと結びついていく。
岡田将生が主演ではあるが、それ以上に男子2人と女子1人の中学生3人の演技が、主役を喰っていた。特に、安室朝陽を演じた羽村仁成の演技は、どこにもいる中学生の風貌であるのに、事件に絡むシーンで、落ち着き払って淡々と語る演技は、とても中学生とは思えず、その奥底に鬼気迫るものを感じた。そして、その相手役となった影を抱える夏月役の星乃あんなと、その義兄で不良役の浩役の前出耀志も、印象に残るキャラで、存在感ある演技を見せていた。
また、その脇を江口洋介、黒木華、北村一輝等の存在感のあるベテラン陣が、しっかり固め、松井玲奈もこれまでにない汚れ役に挑戦し、出演者に厚みを増している。
それほどの番宣も無く、前評判でも話題とならなかったが、金曜日からのレビュー得点が非常に高かったので鑑賞した。脚本もよく、一級のクライム・サスペンスとして、最初の殺人シーンから引き込まれ、中学生の3人の末路が気になり、2時間がアッという間だった