「彼らの魅力がレンズを通して激減している」無理しない ケガしない 明日も仕事! 新根室プロレス物語 おにぎりさんの映画レビュー(感想・評価)
彼らの魅力がレンズを通して激減している
つまらなかった。
彼らの生きざまは本物です。娯楽のない北海道の最東端根室市で、陰キャに属する人たちが『プロレス』を軸に集まり、ある意味本当の自分になれるリングで輝く姿はカッコいいの一言に尽きます。そのリングを用意した故サムソン宮本や、一度解散をしたプロレスを再始動しようと尽力したオッサンタイガーやTOMOYA、メンバーたちの情熱は本当に感動できます。
しかし、ドキュメンタリー映画のクオリティはどうかと思います。
いちばん気になったのは構成です。物語はサムソン宮本を一本の軸として進んでいきます。結論を先に述べ、過去に戻り現在まで順を追って説明する。「羅生門」や「市民ケーン」のようなスタイルですね。しかし脱線が多い。脱線しても良いのですが、サムソン宮本という軸に寄り添えていなくて大事故になっています。
メンバーをできるだけ紹介したい気持ちはわかりますが、それが目的になりすぎて没入感がなくなっています。メンバーにはサムソン宮本とはどういう人物かと説明してもらいますが、唐突であったり、その後の展開に全く活かせていなかったり、あのシーンはなんだったのか?と思えます。大砂厚さんの自宅シーンとか非常にもったいないです。ついでに取材に関わったカメラマンの紹介もありましたが、あれは本当にいらないです。誰?身内ネタやめてください。どうしても出したいなら、冒頭で紹介して、このカメマランの見たものを伝えるなどといった始まり方にするとかしてください。
映像のクオリティも悪いです。もともとニュース映像として撮影したものなので、仕方ないかなと思って見ましたが、冒頭のオッサンタイガーのインタビューで、背景にサムソン宮本の遺影が映っているのはありえないと思いました。すでに亡くなっているのは周知の事実ですが、映画の中ではまだ亡くなっていません。ネタバレです。再撮するべきだと思いました。
音声のクオリティも非常に悪いです。ニュース映像の音なので目をつむるつもりでしたが、ベースノイズが耳障りになるレベルでいちいちカットインしてくるのは良くないです。音声がのらない合間にもベースノイズを入れるか、フェードインを丁寧にするか、編集でどうにかできるものは善処してほしいです。
没入感をなくしています。
謎の4コマ漫画の使い方が雑だとか、「今夜が山田」という伏線にしやすいワードも活かせていないだとか、集客のことしか考えていないナレのキャスティングとか言いたいこと山ほどありますが、キリがないのでこの程度にしておきます。
サムソン宮本が余命宣告を受けるシーンだけは良かったです。あれこそリアル、ドキュメンタリーだと思います。宣告までの間をカットせずに見せてくれてありがとうございます。
最後になりますが、決して新根室プロレスのメンバーたちがやってきたことはホンモノだということは間違ってはいけません。悪いのは制作です。視聴者のことを何も考えず、彼らの生きざまを雑に扱ったことを反省してほしいです。映画第2弾も期待しています。