「中堅俳優4人の競演」異人たち ミーノさんの映画レビュー(感想・評価)
中堅俳優4人の競演
急に亡くした肉親、逝った方も遺された方も、伝えきれなかった気持ち、後悔している行動、もう一度会えたなら…
12歳の時に自動車事故で両親を突然喪った主人公は、既に当時の親の年代になっている。しかし家庭を持たず、ロンドンの高層マンション27階の部屋で一人、シナリオライターをしている孤独な生活。ある夜マンションの警報が鳴り、誤報と思いながらも建物の外に出ると、6階の部屋にだけ人がいるのに気づく。
部屋に戻った後、その6階の青年が、日本のウイスキーを飲もうと押しかけてくるが警戒し、丁重に断る。
彼との会話から昔を思い出し、懐かしい写真を見返しているうち、両親と暮らした家に行ってみることにし、電車で郊外に向かう。家は昔のままの姿だったのを確認し、帰ろうとするとすると、昔の姿の両親が現れる。そんな筈はないと戸惑いつつも、今はライターをしているという息子を歓待してくれる。久しぶりの再会に温かい気持ちになり、母親には「2人のうちどちらかは家にいるからまたおいで」と言われる。電車でロンドンへ戻ると、6階の青年に再び出会う。前回とは違う印象の青年に気持ちを許し、受け入れる。
何度か電車で両親宅を訪ねるうち、青年に会ったことで、ゲイであることを両親に打ち明ける。当時、同性愛はエイズ=不治の病と結びつけられていたため、母親は息子の告白に、頭ごなしな否定や拒否はしなかったが心配はされた。父親とは、自分が女々しかったため昔からいじめられていた話をする。父親はいじめに気づいていたが、息子を救おうとはしなかった。それは、自分自身がいじめる側に近かったためで、主人公もそれを分かっていた。そして「あの時、部屋に入っていかなくてごめんな。」と息子に謝罪する。
そして、二度目の別れがやってくる。
子育て中の親は年齢的にも完璧な人間ではないし、間違えもする。
ロンドンから田舎への電車での移動が、この世とあの世の移動手段になっている。幽霊ビルのような都会のマンションといい、現実と向き合っているのかわからないような生き方の中年の主人公。それでも、自分と自分の過去に目を背けず前を向くことを、不思議な人たちとの交流の中で学ぶのだった。
泣けた。