「ずっと孤独だった」異人たち とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
ずっと孤独だった
…そこに名前がついただけ。"死"を寄せ付ける孤独感、喪失感、そして自分="クィア"【ゲイであること】を受け入れてもらえなかったことに傷つき苦しく、すごく寂しかったんだ。どうか、《しこり》を大きくしないで。だから、僕が君を死から遠ざけてやる。死神も近づけないほどに…。"静かすぎる"孤立したタワーマンションから、隠れた太陽からいずれ光となる。幾度となく出てくる窓ガラスに映る自分の顔=内面の崩壊や(アイデンティティークライシス的)自己探索。エスタブリッシング・ショットによるファーストカットが魔法みたいに素晴らしかったし、外に出たアダムがマンションを見上げるカットよかった。
孤独(や喪失)がいかに人を死に近づける・追いやるか?傷ついた魂が引かれ合う。人によっては冷酷な現実を突きつけられるような感覚にもなるかもしれないが少なくとも自分にとっては、本作中で描かれるような出逢いがなくても"僕"(=アンドリュー・ヘイ)がいるよと、だから生きることを諦めないでほしい。あるいは逆に、あなたが孤独や喪失=しこりを感じるとき、他にも同じように苦しんでいる人たちがいることを思い出してほしい。それらが巡り合い出会ったとき、誰かと分かち合えたとき、きっと一筋の光や希望に変わるから。ラストシーンは、死神が遠ざかっていくようにも、一緒に上がっていく(あるいは落ちていく?)ようにも見えた。それは両親にできなかったこと。誰もが"異人"な世界で、たくさんの独りぼっちに届いてほしい作品。
山田太一「異人たちとの夏」✕ アンドリュー・ヘイ監督 ✕ アンドリュー・スコット主演 = 大林宣彦監督版は見ていたけど、アンドリュー・ヘイらしい味付け・世界観とやさしくあたたかなタッチ・トーンで綴られるファンタジックなドラマは、時を超える魔法のようだった。よく書けた脚本と演出、そしてそれらに"身体"と魂を与える肝心の演技。"アンドリュー"コンビだけでなく大好きなポール・メスカルもまたとてもよかった、主演2人の力と確かな化学反応。ジェイミー・ベル、クレア・フォイ演じる両親役もいい。過去のトラウマや心残り・未練などが堰を切るようなどっと溢れ出しては、余韻が残る…。
勝手に関連作品『WEEKEND』『ロスト・イン・トランスレーション』