「命の重さ」21グラム 六畳半さんの映画レビュー(感想・評価)
命の重さ
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人の命の重さ。それは時に軽く、時に重い。しかしそれは誰にでも過不足無く平等にあるもので、この世に生まれ落ちた瞬間から、互いに影響し、共鳴し、いずれは失われる。それを幾度も幾度も繰り返し、喜びと悲しみ、幸福と絶望を経ながら、ただただ続いていく。終ること無く。
人の経験する喜びと悲しみ、幸福と絶望、これらは単純な二対項では無い。喜びの中には悲しみが在り、絶望の中には希望が在る。まるでそれはシーソゲームの様にせめぎ合い、人を人たらしめている。
一件の交通事故をきっかけに、決して出会うことの無かった3人の運命が交差していく。
ジャックは、前科者の過去を持ちながら、神の教えに希望を見出し、そして裏切られた。しかし、殺される事によって、誰かを救う事が出来るのかもしれないと感じた。何より自分を救う事が出来るのかもしれないと感じた。
クリスティーナは家族を失い、一人の男性に救われ、同時に絶望し、混沌の中にありながら、新たな希望をその身に宿した。
ポールは病のせいで死の淵にあったが、移植によって幸福を手に入れた。しかし、命の前で軽率な行動を取る妻の姿勢に猜疑心を募らせた。しかし、移植された心臓が絶望によってもたらされたのだと知り、一人の女性を愛した。
喜びと悲しみ、幸福と絶望。これらは、いずれ必ず失われる命の重さの前で、複雑に絡み合い、絶えず反復し、終ること無く続いていく。
『それでも人生は続いていく』
そうだ。どれほどの幸福があろうと、どれほどの絶望があろうと、人生は続いていく。だからこそ人は恐ろしく弱く、驚くほど強いのだ。
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