「21gram」21グラム 重金属製の男さんの映画レビュー(感想・評価)
21gram
クリックして本文を読む
人間の魂の重さは21グラムらしい。かつて米国の医師ダンカン・マクドゥーガル氏が行った実験の結果に基づく説で、その意図まではよく存じないが、そもそも観念的な「魂」という存在に「重さ」という概念を与えてしまってよいものなのだろうか。「魂」としての21グラムが重いのか軽いのかも分かりかねる。「目に見えない魂が21グラム『も』ある」と捉えることもできるし、普段人間の死に対して感じる「呆気なさ」とも捉えられる。タイトルに冠せられたそんな数字のおかげで、すっかり余韻に浸ることになった。
ある交通事故を契機に、3人の男女の運命が交錯する。彼らは何かを失うと同時に何かを背負うことになるのだ。時間軸こそバラバラなものの、視点が細かく切り替わる演出には、私たちの生きている世界は繋がっているのだと実感させられる。ひとは一人で生きているわけではないのだ。人生は時に思いもよらない運命によって動かされ、その衝撃に狼狽える。まるで身も心もその「重さ」を失って浮遊するかのように。その都度「たった21グラム」失っただけだと思えたら楽なのかもしれないけれど、現実にはその数値なんて計り知れないもの。そんな運命と対峙しながら、救いを求めて人生は続いていく。
コメントする