「まさに「モーション・ピクチャー」」セントラル・ヴァレー osmtさんの映画レビュー(感想・評価)
まさに「モーション・ピクチャー」
せっかく楽しみにしていた『JAMES BENNING 2023』
結局、観れたのはコレと続編の『ロス』だけだった。
この『カリフォルニア・トリロジー』のラストとなる『ソゴビ』を見逃してしまったのは結構痛い。
ていうか、全8作品を僅か7日間だけというのはチョット短いよなあ。
平日の昼だというのに、結構お客さん入ってはいたし、もうちょい延長しても良かったと思うけど。ねえ?Image Forum さん!
で、本作は、というと、
まさに「モーション・ピクチャー」そのもの。
映画において「風景」が語りかけてくる根本的な「何か」を色々と思索してしまった。
固定カメラで延々と捉え続ける2分30秒ごとのワンショットのフレーミング。
どれもこれも感慨深い。
やはり、当然ながら、風景は四角いフレームで切り取った瞬間、それまでの風景から「絵」というイマージュになる。
「絵」になった途端、風景は四角いフレームの中で、何かを語り出す。
それは既存の言葉だけでは語れない「何か」も含めて。
その「何か」をイメージしていると、2分30秒ごとに、また新たな風景のショットが次々連続して現れてくる。
実験映画の研究者スコット・マクドナルド曰く「ベニングはインディペンデント映画とハリウッド映画の橋渡しをするような映画作家」とのことらしいが、まさに言い得て妙。
冒頭のシーンなんて、近未来SF映画のアヴァンタイトルなんかに、そのまま出てきそうだ。
またあるいは、最近もう見なくなった実験的なCMにも使えそうなネタがテンコ盛りだ。
2分30秒の風景のワンショットが終わりそうなタイミングごと、頭の中では「ここでPARCOのロゴが大きく出て来たら面白いな」なんてことを思いながら観ていた。
微妙に照度が足りないショットが多いのが気になったが、被写界深度を深くするためレンズを絞っているケースが多かったようだから、あれはあれで仕方ないのか。
ラストショットの映像が「え?ここで終わり?」という感じだったが、このショットは、次作『ロス』のファーストショットとなるマルホランドの排水溝へと繋がっていくので、ここは、ひとまず「… to be continued」と頭の中でイメージした方がいいようだ。
なので、当然『ロス』の方から先に観ないようお勧めする。