劇場公開日 2024年5月10日

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Ryuichi Sakamoto | Opusのレビュー・感想・評価

全30件中、1~20件目を表示

4.0一音の響き

2024年7月6日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

20曲のいずれも「一音の響き」を大切にした曲。
派手さはない。超絶技巧も要らない。
その分、演者の繊細な感性が求められる。内面が表出する。
一音一音を如何に想いを込めて、音を慈しむように表現できるか。
(ピアノという楽器は人間的で繊細で本当に凄い。こわいほどに。)

教授の楽曲は、教授の演奏は、まさに「滴のような音色」。
ピアノも弦楽器なんだというのを強く感じる。弦の響きが包み込む。

・『Aqua』はその名の通り「滴」だった。熱いものが込み上げる。
・『The Sheltering Sky』のサビ部分の弦の響き。素晴らしい。
・『Tong Poo』では楽しげな口元も。(他の曲だったかも。)
・『MerryChristmas Mr.Lawrence』。空から降ってくるような音。。

途中で演奏を止めて、イメージと合うところを何度も探り出すシーンも。作品に妥協を許さない姿勢。

静寂な空間。座っている姿勢を変えることさえ憚れる。この映画を観に来ている人はその辺良く分かっていて、皆微動だにしない。静寂。 途中、お腹の音が鳴って焦った。(笑

あまりに静寂だからか演奏時のバックに微かに聞こえる「プシュー」という音が気になった。酸素ボンベ?教授の鼻息?館内の空調? いや多分「ペダル音」なんだろうな。
途中からは気にならなくなったけれど。静寂であるがうえの現象か。

教授の刈り上げられた細い後頭部、皺のある長い指先。モノクロであることも相まって死が迫っているのを感じさせる。

エンディングの曲。そうきたかの演出。
ああ、行ってしまった。。

教授のように生命を完全に燃やして生きているか?自問する。
ありがとう。教授。

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momokichi

4.5Less is more. 死を前に教授がたどり着いた境地

2024年5月18日
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鑑賞方法:試写会

知的

萌える

そぎ落とすほどに豊か。まるで禅の公案のような一見矛盾した感慨を、「Ryuichi Sakamoto | Opus」の坂本龍一のパフォーマンスを鑑賞して覚える。

本作については当サイトの新作映画評論の枠に寄稿したので、よろしければそちらもご覧いただけるとありがたい。そこで「情報をそぎ落とした純度の高いモノクロ映像だからこそ、観客がそれぞれの記憶を重ねやすく、それが一層豊かな鑑賞体験につながるのだろう」と書いた。音数が少ないから、余韻にじっくり浸ることができる。余白があるからこそ、記憶が色鮮やかによみがえる。そんなふうに言い換えてもいいかもしれない。

演奏が片手になった時に空いているほうの手、あるいは最後の音をひき終えた後の両手を、虚空で優美に動かす仕草。想像上のオーケストラを指揮している弾き振りのようでもあるが、残響に触れているような手つきを見ているうち、空気を揺らすバイブレーションが弱まっていくのを指先で確かめ、コントロールさえするかのように思えてきた。空間を満たす音の粒と、まさに全身で一体化しているようなイメージ。

“教授”の愛称でも親しまれた坂本龍一は、新しい音楽に出会う喜び、演奏に向き合い没入する楽しさ、余韻をいつくしむ優しさを教えてくれた。評には「音楽と映画のファンに遺したラスト・ラブレター」と書いたが、教授からのラスト・レッスンとしても大切に記憶にとどめたい。

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高森 郁哉

4.5音のしずくを体全体で受け止め心を揺らす

2024年4月29日
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鑑賞方法:試写会

坂本龍一が音響監修を務めた109シネマズプレミアム新宿で行われた試写会にて、本作に触れた。一年前に亡くなった坂本龍一がこのモノクロームの映像の中で確かに息づいている。映し出される彼の後ろ姿。鍵盤を押さえる指の動き。すっと息を吸って表現へと昇華させていく表情。本作に刻まれるのはピアノ一台を使った演奏シーンのみだ。インタビューや経歴紹介などのドキュメンタリー要素もない。セットリストには私が中学生の頃から何百回と聴き続けた楽曲も並ぶが、これほど体全体で一音一音を受け止め、荘厳に広がりゆく音色に心を揺らした経験は初めて。指先から繊細に生まれる音のしずくが、身と心をゆっくりと満たしていくのを感じた。観客のいないスタジオで収録されたコンサートゆえ、そこには拍手などの要素も一切ない。それゆえ教授の演奏が映画館の客席の私たち一人一人に深く親密に語りかけているように思えるのだ。これほど貴重な贈りものはない。

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牛津厚信

至福の午睡

2024年8月25日
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鑑賞方法:映画館

 昨年3月に亡くなる半年前、坂本龍一さんがスタジオで自作20曲をソロでピアノ演奏する模様を記録した作品です。字幕も語りも一切なく、モノクロの映像が淡々と続きます。収録時にはご自身は勿論、スタッフの皆さんも死期が近い事は分かっていたに違いなく、映像に漲る緊張感は尋常ではありません。紡ぎ出される曲はどれも穏やかでスローで目を瞑って聴いていると、つい意識が遠のきそうになってしまうのです。でも、この作品だけはそれもいいのではないかと思いました。穏やかで贅沢で切ない極上の午睡のひとときでした。

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La Strada

4.5歌舞伎町タワーで拝聴することができた

2024年8月24日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

知的

坂本龍一氏が音響監修し、冒頭の紹介画面で日本一の音響ですと紹介されていた。そこで本作品を聴くことができたのは幸運。東風、シェルタリングスカイ、ラストエンペラー、戦場のメリークリスマスのおなじみの楽曲が特に心に響いた。劇場はお高いのと公開佐連ていてかなりたっていることもあり、数名しかいない贅沢。当方は最近ユーチューブでこのフィルムを知り、劇場検索したらここしかなく、フィーにビビったが、フィルムコンサートに最も適した劇場で、しかも坂本氏監修の劇場ということで思い出に残った。

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ひぐらし2(ひぐらしから引継ぎ)

4.0半端ない臨場感

2024年8月12日
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鑑賞方法:映画館

教授プロデュースの歌舞伎町タワーで鑑賞
結果的に国内最高級の音響で見られて本当に良かった

映画ながらほぼPVみたいなものなのであれだがセリフなんてなく出てきた言葉は教授が二言三言業務的なことを言うだけ

その他は淡々とピアノを引く教授が映るだけ
最初から定期的にトスートスーという音があってなんだこれ?と思ってたらペダルを踏んだり戻したりしてる音
こんなのライブなら気づくはずもないぐらいの異常な至近距離で音を拾っていたということ
いかに静謐な空間でピアノの音を拾い上げたかということ

教授が死期を悟ってのこの作品だったと言われているが痩せて小さくなってしまっていて教授の手や指がこんなに枯れ枝のようだったろうか
モノクロなのと光の加減でさらにそれが強調された

改めて哀悼の意を捧げます

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ニック

4.0ビール、貸し切り。左斜め

2024年8月11日
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鑑賞方法:映画館

興奮

知的

の席から観えた、ピアノを弾き始めた人はもう居ないのだという感慨が、先ず生まれる。このミュージシャンは幸せだったのだろうな、遺影迄も作品にしてもらえる。所々息遣いやピアノ内部の音を拾っているのが耳障り、夢中になって口元が変になったりしてたけれど、戦メリを楽しそうに弾いていた。
拍手の無かった演奏、一人の客席で拍手を送りたくなった。
キースジャレット、大丈夫かな・・。

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トミー

3.0坂本龍一ファン向け

2024年7月14日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

寝られる

22年9月、亡くなる約半年前に東京のNHK509スタジオで坂本龍一のソロコンサートが行われ、映像におさまった。闘病生活を続けていた坂本がヤマハのグランドピアノだけで演奏し、代表作のMerry Christmas Mr. Lawrence、YMO時代のTong Pooなど、自ら選曲した20曲で構成されたモノクロ映像の作品。

ピアノの白鍵と黒鍵、坂本の白い髪と黒い衣装、ピアノの黒と照明の白、など、水墨画のような白と黒の映像美に惹かれた。
手を見るとシワが多く、病気の影響でやつれてるのは明白。
それも有ってか、比較的スローな曲が多かった気がする。
よって、ファンじゃなかったら、暗くてスローな曲が多く退屈だったかもしれない。自分はそう感じた。
本作は、坂本龍一ファン向けだと思った。

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りあの

5.0芸術は長し、人生は短し

2024年7月12日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

幸せ

僕が坂本龍一の音楽に触れたのはもうだいぶ昔になる。
イエローマジックオーケストラ
衝撃的だった
当時から歌謡曲などには興味が持てず洋楽中心に聞いてきたが彼らの音楽はそのどれにも当てはまらなくとても新しい音楽が始まったとワクワクそして楽しみになった事を覚えている。
それから坂本龍一の音楽を聴き続けてきた。
そして去年、先に高橋幸宏さんが亡くなった。とてもショックだった。そして続いて坂本龍一さんの逝去の報を聞きああ僕の一つの時代が終わってしまったと思った。

そしてこの映画の公開。
雨の日に銀座で鑑賞。

涙が自然と流れ落ちてくる
神は神がいればの話だが全ての命に平等に死が訪れる
才能あふれるアーティストにも名も知らぬ人たちにも
彼は死ぬ間際まで音楽と向き合い死と向き合い最後まで生きて死んで行った

演奏中も何度も間違えてその都度引き直して
その姿は悲しくそして美しかった
「芸術は長し、人生は短し」

人が死ぬという事はいろんな事が起きる
残されたものは戸惑うし悲しみだけでなく怒りや疑問まで生まれてくる
死はいつも隣にあって気づかないうちにそばまで来てる
改めて死を意識したがその死の恐怖や葛藤を前に心が澄んでいく教授の音楽に対する思い。
もちろん無念な気持ちもあるだろう。
その本当の心は誰にも推しはかることは出来ない
でもここに、この映像の中に教授は生きていて見る者に色んな思いを伝えてくれる。
それは音楽だけでなく見る者それぞれの人生を鏡のように写してくれる

自分はどんな最後を迎えるのか。
答えはわからないがこの映画を通じて生きることと死ぬことを改めて考えさせられた

教授に感謝

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chai

4.0YAMAHAグランドピアノで語りかける

2024年7月3日
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昨年の追悼上映作品からずっと追いかけてきた 多分これが最後の作品
モノクロでライトが月光みたいで神秘的なソロコンサート ほぼ教授の演奏のみ
首の線が凄く細いのでかなり病状悪かったのではなかろうかと思ったけどピアノを前にするといつも通りの眼光に
教授の作品はピアノの高音メロディが美しくて魅了と思っていたが、低音の伴奏多いので意外だった
しかし海外の映画監督からご指名って改めて凄いことだなと聴きながら思った
亡くなったのは残念で仕方がないけれどもこうして映像や作品が残っていくのはやはり天才故である

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ゆう

5.0静謐(せいひつ)な音楽

Mさん
2024年7月2日
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となりで泣いているおじさんがいた。
私自身も、「Aqua」「Merry Christmas,Mr.Lawrence」を聞きながら、もう坂本さんはいないんだよな、と考えてしまった。

あと、前日はしっかり睡眠をとっておきましょう。

-Set List-

Lack of Love
BB
Andata
Solitude
for Johann
Aubade 2020
Ichimei - small happiness
Mizu no Naka no Bagatelle
Bibo no Aozora
Aqua
Tong Poo
The Wuthering Heights
20220302 - sarabande
The Sheltering Sky
20180219(w/prepared piano)
The Last Emperor
Trioon
Happy End
Merry Christmas Mr. Lawrence
Opus - ending

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M

3.5ライブビューイング

2024年7月1日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

寝られる

曲だけでなく、欲を張ると少しでも坂本龍一のインタビューシーンが欲しかった。

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rs8jn2

4.5素晴らしき映音美

2024年6月27日
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鑑賞方法:映画館

これは映画だろうか?
映音ではないだろうか?
まさに画面に音が映し出されている。そんな風に思いました。
いやしかし、繊細な指遣い、呼吸さえ伝わってきそうな息遣いなどモノトーンの背景からしっかりと坂本教授の暖かみが伝わってきました。
ということは、これは映音画で間違いないだろう。
時には視覚でスクリーンから伝わる鼓動を感じたり、時には目を閉じ、聴覚で音美を感じたり、あっという間の時間でした。
映画館での映像と音の融合というのを感じました。
でも、最後のエンドロールはやはり悲しさが溢れ出しました…

109シネマズプレミアム新宿

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ももじろう

5.0教授、ありがとう

2024年6月23日
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鑑賞方法:映画館

最後で最高の演奏をありがとう。教授。

ずっと教授の音楽が好きで聴いてきました。
1994年以降、可能な限りライブにも行きました。
もうライブで教授にお目にかかれないのは
悲しいけれど、本作を遺してくれて
本当に感謝しています。

本作は映画館での上映ですが、
最高の演奏を聴けましたし、
教授の全身全霊の演奏に、心が震えました。

教授、ありがとう。
これからも命ある限り、教授の音楽に触れていきます。

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ひでちゃぴん

4.0「Marry Christmas Mr. Lawrenceいい」

2024年6月17日
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鑑賞方法:映画館

知的

今年120本目。

109シネマズプレミアム新宿で。
戦場のメリークリスマスの曲聴きたかった。
ここでの順番最高。
この曲の時表情が少し違った。
楽しそう。

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ヨッシー

5.0惜別の時、惜別の音

2024年6月1日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

寝られる

この作品が私達に見せてくれる
坂本龍一の最期の音楽

1曲弾くのにも相当体力を要したであろう
とても痩せている

ピアノ
沢山のマイク
カメラとモノクロ
張り詰めた世界

本当に最期なのかと
目を耳を疑うほどに素晴らしい

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トムヤムくん

4.5音楽って素晴らしい物である。

2024年5月26日
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鑑賞方法:映画館

八番目の曲を聴いた時、突然涙が溜まって来た。
その感動する気持ちはどういう意味かわからない。
しかし、坂本龍一さんは微笑んでいる。
なんだか自分は曲を誤読しちゃった気がする(笑
深く考えるとそれは音楽の魅力的な所じゃないか
唯の意図を詮索することではなく、音楽家の気持ちと観客の魂との共感することはより大切なことだろう。

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Rocky.

4.0残してくれて、ありがとう。

2024年5月25日
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鑑賞方法:映画館

似たような映像をYouYubeで流しっぱなしで聞く事はありましたが、映画館だと空間が良くて、まるでスタジオの横でみんなで聴いているような感覚に。
また、じっくりと向き合って聴くのは、全然違うものでした。
「い・け・な・いルージュマジック」を歌っていた人と同じと思えないほどの、ピアノのやわらかいタッチ。
「東風」がこんなにも優しく美しい曲になるなんて・・・感動しました。

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まありん

5.0Ars longa, vita brevis.

2024年5月20日
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鑑賞方法:映画館

幸せ

故・坂本龍一さんの晩年の記録映画。
"async"、"PERFORMANCE IN NEW YORK" に続くシリーズ感覚で観た。
とにかく没入感が半端なく、時間が経つのを忘れそうになるほどだった。
モノクロの映像から
・スタジオ内の背景の明暗
・スポットライトの中での演奏
・教授がこだわっていたのだろう多くのマイクの配置
・譜面をめくる音まで聴こえてくる、本物のコンサートのような雰囲気
・それでも教授にしか出せない独特の世界観
が伝わってくる。
今回は福岡市内でドルビーアトモス対応の映画館での上映予定がなく、九州・山口エリアでリストアップされていたゆめタウン飯塚か下関駅横シーモール内シネマサンシャインのいずれかで観ることにしたが、スケジュールを観てシーモール下関で観た。
教授ファンの方であれば、遠出してでも観る価値が十分すぎるほどある。

芸術は長く、命は短し。

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まつだ𝕏ですがなにか?

5.0もの凄い満足感

2024年5月18日
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ドルビーアトモスで鑑賞。多分教授のファンの方が見に行っている映画だと思うので、ここにいたるまでの経緯とかは、はしょって自分の雑感を書く。

ZAK氏の録音、ミックスがものすごく繊細な音、例えば鍵盤が沈んだ時の低音まで拾ってるので、そういうところは好き嫌いはあるのかもだが、2010年以降の「音の響き」自体を作品の一部として重要視して来た教授の作風を考えればマッチしているし、時に体力不足の影響からか、ほんの若干あるミスタッチも、ある意味そのような要素の一部として捉える事が出来、私的には気にならなかった。(ちなみにzak氏はambient kyotoというイベントのためにasyncのリミックスも担当されている)

それよりも教授が最晩年に残しておきたいと選んだ楽曲をその最晩年のアレンジで、映画館で聴いている満足感。一曲一曲の濃密さ、豊潤さに物凄い満足感を得た、とてもリッチな時間だった。

私にとって坂本龍一はもちろんYMO等80年代に名声を得たあの坂本龍一でもあるのだけども、その頃のイケイケの教授よりも実はalva notoらと共作しだした、エレクトロニカを経てからある意味新しい音楽の聴き方を手に入れた2000年代以降の彼の楽曲の方が、必死でポップミュージックやR&Bを取り入れようとして、もがいていた90年代よりも、彼が持っていた現代音楽の資質や教養と電子音楽出で経た経験の融合を作品として具現化出来ているように思っている。

もし90年代ぐらいで坂本龍一の作品を追いかけるのを止めてしまった人がいたとしたら、そこは非常にもったいない。私は彼の全盛期は最後の10年だったと本当に思っている。(それ故に、「ガンなのに命を削って作ってたから凄い」だとかそういう所でしか作品を語れないマスコミを残念に思っている。結局ゴッホやピカソの何が凄いのかわからないから、人生が壮絶だったとか言って、浪花節の物語として消費して評価しているのと同じだ。そういう部分にももちろん私は人間としてもちろん感動するが、それよりなにより、作品として凄いという事が残念ながら一般の人にあまり伝わっていないように思う。同様に現役で最重要の音楽家の一人であった事の方が何十年も前に戦メリ作った人、であるよりも遥かに凄いがそれを語れる音楽担当がマスコミにいない。未だに語るのはそこだけかよ、とうんざりする。)

映画に話を戻すと、鑑賞していて、なぜ私がこれほど坂本龍一の演奏、楽曲を素晴らしいと思うのか、というのを改めて理解する事ができた。例えば中期のシェルタリングスカイにしても、本当に必要な音の要素だけをミニマムに時間軸に置いていく、なにかミニマルな建築の柱が並ぶようにフレーズの繰り返しが続く楽曲の構造であるにも関わらず、その必要最低限の一音一音が同時に凄まじくエモーショナルに響く楽曲構成になっているという事が彼の楽曲を特別にしているのだと思う。大友良英氏も確か同じような感想を追悼等で述べられていたと思うが、その両方が同時に成り立っているという事が凄いのだと思う。

エモーショナルな楽曲を作ろうと思えば作れるが、それが坂本龍一の場合ドラマチックに楽曲が展開しているわけではなく(もちろん、ラストエンペラー等の例外もあるが)、限られた音の繰り返しによってなりたっているのだ。そしてそのような彼の資質が最初に述べた「音の響き」そのものを楽曲に取り入れるという引き算的な発想につながり、晩年のasyncやレヴナントのサウンドトラックに結実しているのだと思う。

そのような楽曲であるが故に、最晩年の一音一音の音を丁寧に響かせて聞かせる彼のピアノのスタイルが当然のように合うわけで、私にとっては本当に至福の時であった。本当に最後のライブを目の前で拝見するかのように一音一音を噛みしめて味わう事が出来た。映像、カメラワークも美しかった。終わってから、家に帰るまでの時間もずっと心が満たされていた。

今作に限らず、asyncのライブや彼のピアノ演奏を劇場のしっかりとした音響設備で定期的に聴けたらなと思った。あ、それと、教授が審査委員長だった大島渚賞を「セノーテ」で受賞された小田 香さんが撮影班に(メインの撮影担当ではないが)いらっしゃったことを最後のクレジットで知り、それもうれしく思った。

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moviebuff