「毒気が少ない分、カタルシスも弱い」私がやりました tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
毒気が少ない分、カタルシスも弱い
殺人犯のフリをした女優とその友人の弁護士が、女性の地位向上を訴えることで無罪を勝ち取り、名声を得ていく展開は、コメディ・タッチのサクセス・ストーリーとして面白い。
ただ、台詞の多さが物語のテンポを阻害しているし、退屈とは言わないまでも、フランス語の響きのせいで眠気に襲われてしまった。
真犯人が現れてからは、この欲の皮が突っ張った老女優を、どのようにしてやっつけるのかと思って観ていたら、なかなか期待したような展開にはならない。
終盤で、タイヤ会社の社長の前に、建築家、女優、弁護士、老女優が次々と姿を現し、言葉巧みに大金を巻き上げていく様子には、コン・ゲームのような痛快さと演劇的な面白さがあるのだが、それでも、それが老女優のためであることを思うと、あまり素直に喜べない。
誰も傷つかけずに円満にコトを収めるためには、敵対して潰し合うよりは、味方に引き込むのが一番良い方法だとは分かるのだが、それでも、こうした欲深い老害には、やはりギャフンと言わせて欲しかったと思うのである。
それから、殺されたプロデューサーの卑劣さは言わずもがな、判事は無能だし、検事はいけ好かないし、フィアンセは頼りないしと、出てくる男たちは総じてダメ人間ばかりであるが、唯一、建築家だけは、誠実で信頼の置ける人物として描かれている。
これはこれで、「男の中にも善い人はいる」という、一種の救いにはなっているのだが、ただ、「男性優位の社会に女性がくさびを打ち込む」というテーマを徹底するのであれば、やはり、男性は全員、ダメ人間であっても良かったのではないかと思えるのである。
そうでしたか!
ボーとしていて、エンド・クレジットを読み飛ばしてしまいました。
やはり、ダメ人間だったということで、何だかホッとしました。
ありがとうございました!