「青春×陰謀×SF×友情=クソやばい」デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
青春×陰謀×SF×友情=クソやばい
ある日、突如として東京の上空に巨大な母艦が出現、それ以来世界は一変した。
一方で、女子高生の門出とおんたんとその仲間たちは、そんな中でも変わらぬ日常を過ごしていた。
しかし、母艦が浮かぶ状況は少しずつ彼女たちの生活に影響を及ぼし始め……
突然の悲劇、思い出される過去の記憶、恋、そして友情。
2人のディストピア青春活劇が今始まる。
『おやすみプンプン』しか漫画は読んだことがないけれど、浅野いにおの描く世界は大好きで、予習しようかと思ってたら結局ギリギリになってしまったので映画から鑑賞。
いや、おもしれー。
こんなに泣ける話だとは思っていなかった。
少女の青春成長譚なんて大好きなジャンルだし、陰謀論とかパロディとか色々挟んでくると思ったら、人間とは?正義とは?みたいな部分まで切り込んでいって、現実と虚構が入り組んでいるようでどこまでもリアルなSFってところ?がねぇ?もう、好き。
「知ってるよ!」でボロボロだったな。
3年前に母艦が現れてから何もかも変わったとは言うものの、日常は表面的には何も変わらず続いている。
なんとしても事態を収束させたい政府、状況に慣れてきている市民、危機を訴える陰謀論者や過剰に反応する一部の人たち。
このギャップがリアルで、まさに東日本大震災やコロナウイルスの蔓延といった未曾有の危機に立たされた日本の姿だなと思った。
小型船の墜落が後を絶たないのに、多くの人はなんとなくこんな状況に慣れてしまっていて、真相に近づこうとする者はいない。
しかし、震災にしろ感染症にしろ、忘れた頃に再びやって来て人々はハッとさせられる。
門出やおんたんたちも、まさに友人の死によってそんな日常からいきなり現実へと引き戻された。
決してどちらが良い悪いではない。
これからも生きていかなきゃいけない我々にとって、都合の悪いことを忘れるのはある意味防衛本能だ。
でも、大切な人を亡くした記憶や悲しい過去はどんなに事態が平和になろうとも消えることはない。
戦争や震災やコロナのこと、どこか遠い昔のように感じて、再び平穏な日常が訪れようとしている今だからこそ、風化してしまいがちな負の歴史をもう一度胸に留めるべきだと、この母艦は我々に警告しているのかもしれない。
アニメーションのことは全然詳しくないから完全に素人目だけど作画は綺麗だし、幾田りらとあのという最強タッグがこんなにピッタリだとは思わず、爽快な主題歌も最高で大満足だった。
キャラクター造形も良く、おんたんのお兄さんとかブサ犬とかもちろんイソベやんもだけど、他の作品には出て来なさそうな濃いキャラクターがクセになる。
前章だけだと、だいぶ回収されてない疑問点が多い。
石川の2人は何なのか全く分からないし、2人の過去と正体は何なのか逆に混乱して終わっている。
ラストの言葉を失うような光景に早く世界を変えなくては(=後章観なくては)と思った。
予想以上に面白くて大好きな作品だったので、後章も原作も早く観たい!!
※
ちなみに今回、シアターギルド代官山という映画館で観たのだけど、ここがなかなか面白いところで、ヘッドホンをつけて椅子やソファに座って見るホームシアターみたいな感じの映画館だった。
夜はバーみたいになるらしく、支払い方法はクレジットか電子決済のみ。
音は聞こえやすいし映画に集中しやすいけど、椅子だと体が疲れたり、段差がないので前の人の頭が気になったり、劇場よりは明るいので思いっきり泣けなかったりとメリットもデメリットもある感じかな。
値段も少しお高めだったが、たまにはこういう映画体験も面白い!