「食わず嫌いは損。アニメと侮るなかれ。」デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章 sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
食わず嫌いは損。アニメと侮るなかれ。
面白かった!
原作未読で、予告編を観て視聴を決めた作品だったが、当たりだった。(追記:がまんできず、翌日、原作全巻購入…。恐る恐る読み進めている最中)
自分の身の周りでも、アニメということで視聴を手控えているという話を聞いたが、アニメと侮るなかれ。食わず嫌いは損をする傑作。
「幾田りら」と「あの」が、主人公2人の声優を務めるというと、話題づくりで観客動員を狙っているように思われるかもしれないが、彼女たちのキャスティングを決めた方の眼力に拍手喝采したい気持ち。
とにかく、声がキャラクターとバッチリ合っていて、世界観に引き込まれた。
母艦の存在は、3.11をベースにしているのだろうけれど、映画で描かれるそれへの人々のズレた対応や関わり方は、それだけに留まらず、現在も地球上で起きている戦争(ガザ侵攻やウクライナ侵攻)や、温暖化などの環境問題、コロナ禍などのメタファーとも見ることができる。
非日常の危機がすぐそばにあるのに、そこから目を逸らして日常を送り続ける居心地の悪さ。人の持つ善性と個の正義感の芽生え。やがて肥大化した正義感とそれによって生じる加害性の問題など、映画の中で起きていることが、自然と現実世界で個人個人が体験していることとリンクしてくる。
特に「正義」が集団化することの気持ち悪さだけでなく、個々の「正義」の問い直しや「絶対」の危うさなど、実写で描こうとしたら陳腐になりそうなものを、原作者浅野いにおの絶妙な世界観の中で、過不足なくこちらに伝えてくる深みがある。
また、例えば漫画で過去を描くときは、ページの外側をベタ塗りで黒くするという表現があるが、この作品では、過去描写は画面サイズを変えることで対応していて、とても映画的であるところも好印象。配信やテレビではなく、映画として映画館で観る価値がある作品であることを強調したい。
明らかにドラえもんのパロディという劇中内漫画「イソベやん」の存在もバツグン。クオリティが高く、かなり笑えて、チクリと毒もある。かつ、これが亡くなられたTARAKOさんの声が聞ける最後の作品ではないだろうか。
前章を観ただけでは、マルチバースの可能性が暗示されただけで、はっきりしていないところも多いが、門出とおんたんの2人がどのように関わりながらこの混沌とした世界と向き合っていくのか、自分としては、後章に向けてとても期待が高まった。
公開当日のレイトショーには、10代20代と思しき若者が目立ったが、アラカンの50代にもキチンと刺さる作品。
一晩経って寝て起きても、頭の中で、「デデデデデストラクショ〜ン」というテーマ曲のフレーズが鳴り響いていた。
視聴を迷っている方、自信を持ってお勧めします。
<追記>
後章の公開が1ヶ月伸びたのは、前章だけで100ヶ所以上リテイクし、試写会後も公開までの間に差し替えがあったという、原作者浅野いにおのこだわりで、きっと後章のリテイクに時間がかかるっていうことなのだろう。(映画オリジナルの書き下ろしクライマックスとの記事も複数ある)
原作者がきちんと関わっているメディア化だということも指摘しておきたい。安心しながら、後章を楽しみに待ちたい。
「あの」ちゃんも「りら」ちゃんもキャラクターにめちゃくちゃあってました。歌手の人って感性と音感がすごいから、なりきれるんでしょうね。
> 後章のクライマックスは書き下ろしのオリジナルと言われてますので、とても楽しみです。
どんなクライマックスなんでしょうね。
僕は、ダークなクライマックも好きなので、ずっと余韻があるラストだといいんですが。
共感ありがとうございます。私も原作全て読了しましたが80話くらいからちょっとついていけなくなりました。主人公たちの高校生時代の温度感はちょうど良かったのですが。
コメントありがとうございます。
展開自体に加えて、やっぱり最後は門出とおんたんに何とかしてほしかったんですよね。
それが多少作為的でも、ご都合主義でも。
しかし、前章のクオリティと脚本・構成の吉田玲子、そしていにおさん…
否が応にも期待しちゃいますよね。