劇場公開日 2025年6月13日

「滑稽にして痛快 『JUNK WORLD』で躍動する“男根”の意味」JUNK WORLD 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5滑稽にして痛快 『JUNK WORLD』で躍動する“男根”の意味

2025年6月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ストップモーションアニメの傑作である前作『JUNK HEAD』の前日譚として描かれた本作は、シリーズ第2作にあたりました。

発想、筋立て、カメラワーク、そして独特の世界観など、すべてが新鮮で驚きに満ちていた前作に比べると、本作ではこの世界観に対する“慣れ”が生じたこと、さらに今回は日本語吹き替え版で鑑賞したこともあり、前作ほどの強烈な衝撃は受けませんでした。なお、吹き替え版ではないオリジナル音声版は、前作同様に“ゴニョゴニョ語”で構成されていたようで、そちらで観た方が本作の世界観により深く没入出来たかも知れないな、とも思いました。しかし一方で、日本語吹き替えのおかげで物語そのものにより深く集中できた点は大きく、結果的にはそれも良い選択だったと感じています。

物語の内容も非常に興味深く、人間と人工生命体「マリガン」との対立だけでなく、人間同士、マリガン同士の間にも思想の違いがあり、その葛藤が赤裸々に描かれていました。それは現実世界の縮図とも言えるような、鋭いメタファーとして機能しており、考えさせられる部分が多くありました。

また、前作に引き続き“男根”の描写もユーモラスに表現されていました。一見すると子供じみた表現にも思えますが、実際には世に蔓延する男性中心的思想への風刺であり、そうした未熟な価値観を皮肉る姿勢が実に痛快でした。さらにキャラクターのネーミングも秀逸。特にダンテの部下で、実はカルト教団「ギュラ教」のスパイだったキャラの名前が”アオタス”。最初は何のことか気付かなかったけど、ダンテを刺し殺そうとした時にダンテが「アオタスお前もか!?」ってセリフで納得。”ブルータス”を”アオタス”にしただけだけど、上官を裏切る役柄に命名し、使いどころもジャストミートで大爆笑でした。

エンディングでは、シリーズ完結編となる第3作目『JUNK END』の制作が開始されたことを知らせるテロップが表示されており、ここまで来たからには最後まで見届けたいという思いが強まりました。ちなみに、第1作の制作には7年、本作には3年を要したとのことなので、次回作の公開は早くても2028年以降になりそうです。次は一体どんな“男根”が登場するのか——今から楽しみでなりません。

そんな訳で、本作の評価は★4.4とします。

鶏
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