「真実か名前か?」リアリティ odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
真実か名前か?
Reality(真実)のタイトルから犯罪捜査のサスペンスかと思ったが主役の容疑者の名前Reality Leigh Winner にも掛けていたのでしょう。
リアリティ・リー・ウィナーは、アメリカ空軍の退役軍人で、名誉除隊後も最高機密のセキュリティクリアランスを保持していたため軍事請負業者プルリバス・インターナショナル・コーポレーションに翻訳者として就職。彼女は2016年のアメリカ合衆国選挙におけるロシアの干渉に関するNSAの情報報告書を漏洩、政府の機密情報をメディアに許可なく公開したとして2017年、FBIに逮捕され2018年、史上最長の5年3ヶ月の刑を言い渡されました。映画は2017年6月3日にFBI捜査官がウィナーの自宅を家宅捜索、尋問を行った様子を当時のFBIの録音記録を元に脚本とした再現ドラマでした。そのせいか、画面でも録音を強調するかの様な音声波形のインサートがありましたね。
明かな冤罪、不当逮捕でもないですし、テレビの報道特番で済むような話を何故、ティナ・サッター監督は舞台化や映画化までしたのか分かりません。
ウィナーの弁護士は、6月3日にFBIの尋問を受ける前にミランダ権利(黙秘権、供述が証拠に使われること、弁護士に立ち会いを求める権利)が読み上げられなかったと主張し自白の無効化を訴えましたが却下された経緯があり、推測ですがその辺の真実を明らかにしようと言うのが監督の狙いだったのではないかと思いました。確かにFBIのセリフ内容は微妙ですが、あくまでも任意のお尋ねと度々念を押していたので証拠として有効だったのでしょう。
問題があるとすれば退役後もウィナーの国家機密情報へのアクセス権を無効化しなかったNSAの方にあるんじゃないでしょうか、彼女は空軍ではペルシャ語、およびアフガニスタンの公用語であるダリー語とパシュトー語を話す言語学者としてドローンプログラムに配属され傍受した外国の会話を盗聴し米軍に情報を提供、「650人の敵の捕獲、600人の敵の戦死、900の重要目標の特定を支援した」として空軍表彰メダルを授与されたことでの特別待遇かな。
また、機密文書を受け取ったネットメディアのインターセプト社も問題、真贋を確かめようと受け取った文書をNSAに渡したためFBIの捜査が開始された経緯から責任を感じたのかウィナーの弁護士費用を払っていたようですが情報提供者の秘密を守る基本が出来ていないのは看過できませんね。
兎に角、映画は捜査官とウィナーの対話ベースなのでサスペンス感を期待したのは失敗でした。