シチリア・サマーのレビュー・感想・評価
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やや見にくい点があるものの一応おすすめ枠。
今年393本目(合計1,043本目/今月(2023年11月度)25本目)。 (参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで)) いわゆるLGBTQ問題を扱った映画で、このこと(実話である点ほか)はエンディングロールで実は流れます。 ストーリー自体は他の方が書かれているのでここではズバっとカットします。 表題に「やや見にくい」と書きましたが、この映画は1980年代が舞台です(よって、スマホだの何だのは一切でない)。ただ当時の映画の4Kリマスター版かといえばそうではなく、今現在2022~2023年で見ると妙に画面が「ざらついて」見えたり、字幕も何を言いたいのか日本語がこなれていない部分が結構あり、そこがかなり人を選ぶかな…という印象です(繰り返しますが、この映画はリマスター映画ではありません)。 この「字幕のわかりにくさ」はこの「リマスター映画ではない」映画でありながら1980年代を扱ったがためにそれを逆に意図してそうしている(言い回しが妙に古臭いなど)のかなと思ったくらいです。まさかイタリア語に精通している方が多くいらっしゃるわけではない日本ではどうしても字幕版でしか見ることはできず(日本語吹き替え版というものがない)、また、映画の特徴として「人名にせよ地名にせよ妙に多く出てくるので最初は何が何か情報整理が追いつかない」という点も挙げられます。 ただ途中からは明確にLGBTQ問題を扱った映画である点はわかるしエンディングロールでは明確にこのことが描かれ、イタリアという、フランスやドイツといった「よく知られる国」とは一ランク下がる(イタリア映画祭りは大阪市では年に1回くらい)イタリア映画でこの点を扱って放映した点は高く評価できます。 採点に関しては以下を気にしましたが、「以下の点を了知してみるなら」フルスコア切り上げにしています。 ----------------------------------------- (減点0.2/妙なまでに古臭い字幕や画面のざらつきなどが気になる) リマスター映画であればそうなるのはまだ理解できるのですがそうではないので(正直、入るシアター番号間違えたのかとすら思ったくらい)、ちょっとここは好き嫌いが分かれるかなといったところです。 ----------------------------------------- ただイタリア映画でLGBTQ問題を扱った映画というのはやはり数が少なく、上記の点を押してでも本映画は推せます。
美しく儚いものに乗せたメッセージ
実在の事件をベースに、少年二人の出会いと行く末を描いた作品。 二人が向け合う憧憬や愛着、そして仲が深まっていく様子を言葉少なに描く数々のシーンが美しい。 実際の事件は約10歳差のカップルの事らしい。本作では二人をほぼ同じ年齢の、学業を終え自立し始める年頃に設定することで、心身も社会的にも子供から大人に変わる刹那の儚さや危なっかしさが強調されていた。二人が新生活をのびやかに謳歌しようとする姿が眩しかった。 二人を取り巻く環境が性的マイノリティを糾弾する理由は、宗教的な背景のみならず、家族や血縁を重視しそれらが固く連帯することで成り立つ島の「ムラ」と「群れ」の社会構造にも由来するのだろう。家業が無ければ日雇いで働き、手持ちがあるうちはカフェで屯していても許される緩い社会ではあるが、群れの秩序を乱す異端は許されない。仮に異端を許せば、群れ全体がよその群れに攻撃されてしまう。 その視点で観ればこの物語は、環境と生きづらさの間で喘ぐ全ての人の物語になり得るのではないか。 島の外で生活する選択肢がない中、二人が生き抜く術はあったのだろうか。島で集団が生活する術として培われた秩序と、個人の「自分らしさ」が共存する道はあったのか、無人のエンドロールに胸が詰まる思いがした。
映画.comさんからのご招待で試写会で観ました。ただただ悲しいなあ...
映画.comさんからのご招待で試写会で観ました。ただただ悲しいなあ、みんないい人なのに。
保守的な町での哀しき純愛
ポスターアートとかからLGBTQ+ストーリーと察していたが、顛末を知らずに観たのでラストで驚き、これが実話がベースで、イタリアでLGBTQ+の人権団体が誕生したというのにも驚いた。 実話の顛末は諸説あるらしいが、こうしたマイノリティへの差別・迫害事情もさることながら、根底にあるのはマチズモ意識の高さ。舞台がシチリア島の保守的な町というのも関係しているのだろうが、男性優位主義がもたらす弊害もチラつく。2016年に他のヨーロッパ諸国より遅れめで同性婚が認められたイタリアだが、シチリア界隈ではそれを良しとしない意識がいまだ根強いとか。『ゴッドファーザー』といい近作の『イコライザー THE FINAL』といい、映画に登場するシチリア住民が軒並み荒々しく描かれているあたりからもそれは伺える。もっともそうでない住民達にしてみればいい迷惑だろうし、そもそも同性婚が認められていない日本なんかよりかははるかに進んでいると言えるけど。 主役2人が美形というこの手の映画では外せない要素もしっかり抑えているので、ストーリーは悲劇だけど、やおい大好きな方も楽しめるのではなかろうか。
二人でいるだけでよかったのに
シチリアの美しい青の映像美の中、思春期の恋愛なので甘酸っぱいキラキラ感も漂ってくるし、背景の美しさもあって明るい世界観が続く。 それに反して二人でいられたらそれだけで幸せなのに、周囲からの目は優しくないので始終不幸観がつきまとうのがしんどい。 ラストのロミジュリ感に萌えた。 映画を通して、本当に人の価値観に合わせて生きている限り何一つ幸せになれない、ということを教えてもらっている。 個人の幸せは個人が決めるしかないのだ。 その上で家族の役割をやはり考えてしまう。 家族が世の中の多数に属さない考えを持って生まれてきた時に、家族はどう向き合うべきなのか。 子どもは家族のチーム一員であって、親の所有物ではないので、違いを受け入れてそれもいいね!と言い合える環境でいたいなといつもこういう映画を観ると思う。 血の繋がりだけが全てとは全く思わないのだけど、家の中に味方がいるというのは生きていく上でとても重要なんじゃないかと思ってしまう。 実話元に作られた作品だそうで、この事件をきっかけにデモ活動が起こり、イタリアではARCIGAYという非営利団体が出来たのだそうだが、現在の世界を見ても全く偏見のない世の中ではない。 皆が心から自分の好きを主張できる世界になることを願わずにはいられない。
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