「ミステリーマニアとしての知識を活かした頭脳戦が楽しめないのは物足りない」映画 マイホームヒーロー tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
ミステリーマニアとしての知識を活かした頭脳戦が楽しめないのは物足りない
半グレにも警察にも目を付けられた主人公が、絶体絶命の状況をどのようにして切り抜けるのかという序盤の展開には引き込まれる。
半グレの男と付き合っていたことのある娘が、警察官になっているという設定の違和感も、そんなには気にならない。
だが、半グレ集団を壊滅させることのできるデータを持つ男が、突然、主人公に協力するという展開は、あまりにも他力本願で、ご都合主義すぎるのではないだろうか?
そもそも、そんなデータを持っているのなら、すぐに半グレを壊滅させてしまえばよいものを、なぜ、7年前の遺体が見つかるまで何もしなかったのだろうか?
父の仇の男が姿をくらましていたからなのかもしれないし、協力者が欲しかったからなのかもしれないが、だったら、一体いつまで待つつもりだったのだろうか?
それに、いくら警察が無能だからといっても、そんな重要なデータを、いちジャーナリストが入手できたということにも説得力が感じられない。
あっさりと敵に捕まってしまう妻と息子も、父の邪魔をしに来たとしか思えない娘も、いくらでもチャンスがあるのに引き金を引かない半グレのポスも、揃いも揃って間が抜けている。
何よりも、この物語の最大の売りであったはずの「ミステリーマニアとしての知識を駆使して敵を出し抜く」というプロットが、まったく見受けられないのは、物足りないとしか言いようがない。
せっかくの十億円が、ほとんど活用されないまま灰になってしまったのも、色々な意味で勿体ない。
主人公が、変に逃げ切らず、しっかりと罪を償うことになるラストには納得できるのだが、その反面、土砂崩れで遺体が見つからなかったらどうなっていたのだろうという疑問も残る。もし、そうなら、主人公は、どこかのタイミングで自首していたのだろうか?