「神田伯山の声が素晴らしい」クラユカバ 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
神田伯山の声が素晴らしい
塚原監督の独特の世界観を堪能できる連作の一本。同日に公開された『クラメルカガリ』とは物語は繋がっていないが、同じ世界観を共有している間柄で、片方だけ見ても楽しめるが、2本観るとこの作品世界の拡がりが感じられてさらに面白くなる。他にも過去に発表した短編『端ノ向フ』などともつながっている。大正浪漫にスチームパンクを組み合わせたような架空の世界で、落語や講談の調子も交えたお話しが展開していく。実際に主役を演じるのは講談師の神田伯山だ。
物語は、主人公の売れない探偵をやっている青年に心の中を深くもぐりこんでいくような内容を、実際に巨大な迷路のような地下に失踪事件の手がかりを探しながら進んでいくというもの。地下の町の猥雑で活気ある風情が昔の日本の闇市っぽくていい。
画面全体に独特のフィルターをかけたビジュアルも雰囲気があっていい。すみずみまで作り込んである作品世界をもっと探検したいと思わせる内容で、続編や姉妹編などのさらなる展開を期待したい。
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