「【”色眼鏡を通さず、差別、偏見なく心で人を見る大切さ。”奇想天外な設定であるが、人権を無視したメディアの暴走や、愛してしまった女性かスクープかに悩む首直前の週刊誌の男が煩悶する姿が印象的な作品。】」隣人X 疑惑の彼女 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”色眼鏡を通さず、差別、偏見なく心で人を見る大切さ。”奇想天外な設定であるが、人権を無視したメディアの暴走や、愛してしまった女性かスクープかに悩む首直前の週刊誌の男が煩悶する姿が印象的な作品。】
ー 惑星難民Xの受け入れをアメリカが了承した事で日本でも惑星難民Xの捜索をスクープとして始める週刊誌・・、という設定が奇想天外過ぎる。(褒めてます。)
週刊誌記者の笹(林遣都)は、スクープが取れず拉麺紹介の地位に在り、何時首を切られても仕方ない状態。だが、惑星難民Xの捜索をスクープすべく、与えられた資料に在った二人の女性に近づく。一人はコンビニと宝くじ売り場で働く柏木良子(上野樹里)。もう一人は良子と同じコンビニで働く台湾から地震予知について学びたくやって来た留学生リン(ファン・ペイチャ)である。
だが、彼は徐々に良子の魅力に惹かれていき、良子も彼の真摯な姿に惹かれていく。一方、リンは居酒屋でも働いているが日本語が上手く喋れず、聞き取れず孤立感を覚えるが同じバイトのロックバンドのギタリスト拓真(野村周平)に支えられ、いつしか彼と恋に落ちていく。-
◆感想
・自分を育ててくれた認知症の祖母を施設に預けつつ、自身の職も危うい笹の姿が切ないが、彼が良子と可なり強引に関係を築く様と、その後良子の父親が惑星難民Xではないかと信じ込み、良子への想いとスクープを取りたいという板挟みの姿が、少し描き方が粗いが伝わって来る。
ー そして、彼は良子と共に彼女の両親(酒向芳&原日出子)に会いに行き、父の白髪を一本取り逃げるように去るのである。
だが、彼の書いた記事は愚かしき編集長達(嶋田久作&バカリズム)により、可なり捏造されてスクープ記事として紙面を飾ってしまう。
その後、良子と彼女の両親のもとに押し掛ける愚かしきマスコミたち。-
・一方、リンは日本語の習得に苦労し、日本客の心無い差別的言葉に疲弊していく。
ー この辺りも、観ていてキツイ・・。-
■押し寄せたマスコミたちの前に出て来た良子の父が”私は惑星難民Xではない。”と言うシーン。マスメディアの暴走をシニカルに描いていると思ったよ。
・リンは、拓真から同居することを提案されるシーン。
ー 拓真だけがリンを色眼鏡で見ていない。そして彼女に”部屋代が浮く分、バイトを減らして日本語の勉強をしなよ。と言って自分も台湾語を学ぶ本を彼女に見せるのである。実に良い漢である。-
■一方、遣り過ぎ報道を糾弾された編集長は、笹と共に記者会見を開き笹に誤らせるが、実は編集長は何の反省もしていない事が分かるシーンは、怒りで脳内沸騰する。正に売り上げだけ伸びれば良いというジャーナリズムの欠片もない姿。
■ラストシーンには少し、救われる。且つて笹が本好きの良子に”ブックカフェやりなよ。”と言った言葉が影響したのか、良子は居を移し、ブックカフェをオープンし、子供達に本を読んであげている。そして、一人の男の子が彼女に渡した宝くじ。それは当たりの宝くじであった。
そこにやって来た笹は、戸の外から大きな言葉で謝罪をするのである。そして、良子は宝くじが当たって居たら・・と告げるのである。
<今作は、三つの黒い黒子の様な点とか、黒いモヤのシーンとか、良く分からない所も多い作品であるが、個人的にはラストシーンを含め、笹の人間性やそれを懐深く受け入れる良子や、リンを助ける拓真たちの人間の善性溢れる”色眼鏡を通さず、差別、偏見なく心で人を見る”姿が印象的な作品である。>