「その時愛は一瞬にして変わる」Fair Play フェアプレー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
その時愛は一瞬にして変わる
映画などでよく描かれるエリートたちのパーティーシーン。
揃いも揃って若い美男美女。カッコいいスーツにセクシーなドレス。
ゴージャスで、贅沢なお酒や料理に舌鼓。
浮かれに浮かれ、誰もが人生の成功者の顔。俺/私たちを中心に世界は回っている。
付き合ってたり、カップル誕生も何組も。パーティーの後はホテルへ。チュッチュッチュッチュッ、からのベッドイン。
憧れ? 羨ましい? それとも…?
ひねくれ者の私はよくこう思う。神様!どうかこの高慢ちきな連中に悪い目を!
…が届いたかどうかは別として、修羅場に陥っていく。
NYの超一流ヘッジファンド会社。
過酷な競争世界の中、エミリーとルークは同僚で、密かに付き合う恋人同士。
同棲し、婚約も。仕事もプライベートも順調。
ある時PM(正式名称ポートフォリオ・マネージャーで、責任者らしい)がクビになり、誰が後任になるか…?
エミリーは小耳に挟む。後任者はルーク。
それを密かにルークに伝え、期待が高まる。
が、後日CEOが抜擢したのはエミリーだった。
エミリーは気まずそうにルークに伝え、ルークは祝福するが…。
その後の展開は自ずと想像付く。
ルークが祝福したのは表面上だけ。本心は…。
それまでラブラブだった二人。
これを機に二人の関係も悪化していく…。
男女平等の社会。
仕事に於いてもどちらが上司かなんて今や関係ない。
本当にそうか…?
まだまだ性別の格差があちこちに蔓延る。
殊に、未だ男尊女卑が残る中国や韓国、日本でも政治の世界で中年や老害連中など少なくはないだろう。
今年あった宝塚研究生のいじめ自殺事件。女性世界のイメージだが、そのトップは中年初老の男ばかりで私は驚いた。そこに女性のトップはいないのか…?
日本やアメリカでは女性がまだ国のトップになれず。
男女格差は問題なほど根強い。
それを個人と個人の関係に。
愛が相反する感情に一瞬にして変わる。
男の嫉妬ほど醜いものはない。
そこに、また別のものが絡む。
元々エミリーはポスト的にはルークより下だった。
それが突然昇進したのは、“女の武器”を使ったのに違いない。
本人が言ったのではない。同僚が。が、嫉妬に駆られた猜疑心はそうと思い込む。
愛から妬みへ。憎悪に。
無論エミリーは色仕掛けで昇進した訳ではない。純粋に能力と実力で。
昇進してすぐの上役会議でもアイデアを出す。
低いポストに甘んじている人材ではない。
その才能を、CEOは見抜いていた。
見る目あるCEOだが、冷徹な面も。
実力ある者は高く評価する。が、実力なき者は…。不必要ならば切り捨てる。切り捨てなくとも全く関心ナシ。CEOにとってルークがそれ。
競争激しい実力主義の世界では当然のように思えるが…。
恋人で同僚。詳しく言えば自分より下だった。
それが突然、上司に。
うっわ、やりづらい…。社内恋愛はやっぱりやるもんじゃない…?
仕事として割り切る側と、そうでない側。
エミリーが仕事でミスる。たった一度の失敗で信頼ガタ落ち。CEOからはパワハラ暴言。
これ、ルークがわざと足を引っ張ったような…?
すぐさま損失分を取り戻し、信頼を回復させるが、その時のルークの胸中は…?
一見するとルークが追い込み、エミリーが追い込まれているようだが、ただ一概にそうではない。
エミリーは上司とよく飲みに。夜遅くベロンベロンになって帰り、水入らずの最中深夜の上司からの電話に出る。
ルークからすれば気分いいもんじゃない。理性ある事言うが、貶すような事も…。
どちらにも言い分がある。
職場でギスギスし、家に帰ってからも。
愛を信じてはいるが…、次第に揺らぎ始める。
そんな険悪になりつつある時、エミリーの両親が両家を招いて大々的に婚約パーティー。
ちょうどルークがCEOに楯突き、事実上のクビ。エミリーとの関係も完全に。連絡すら取れない。
やむなくパーティーに行くが、そこに何食わぬ顔してルークが。
考えるだけでも恐ろしい本音ぶちまけの修羅場が始まる…。
概要は下世話ネタのようだが、
官能要素を交えつつ、実は非常に秀逸な男女のパワーバランス、エゴや心理描写を巧みにスリリングに描き、現代社会に生々しく訴える。
俊英クロエ・ドモントの手腕は見事。
フィービー・ディネヴァーとオールデン・エアエンライクの男と女の全てをさらけ出した熱演は必見!
二人の行く末は…?
最後まで目が離せない。
一級のサスペンス!