劇場公開日 2023年9月22日

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「「リベンジホラー」ではない気がします」PIGGY ピギー 頼金鳥雄さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「リベンジホラー」ではない気がします

2023年10月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

怖い

知的

リベンジホラーというのは、ひどい目に合わされた相手に(レイプとか)残酷な手段で復讐する話だと思うのですが、この主人公と犯人はそういう関係ではありません。結果的にいじめっ子たちを救う方向のストーリーだし、グロ描写もありますが、決してリベンジではありません。むしろ複雑な思春期を描いたドラマだと思います。

体や友達の悩みについて、一番の相談相手になってくれそうな母親は正論パンチで娘に寄り添うことがありません。彼女が「辛かったね。」と共感してくれる人なら、ここまで太る事は無かったんじゃないかな。

主人公のサラは単に太っているだけなのに、壮絶ないじめを受けてます。自分が一番きついと思ったのは、荷物を奪われ水着で帰宅せざるをえないシーンです。その帰宅途中でレイプでもされるのでは…とハラハラしたのですが、さすがにそこまでではありませんでした。でもすごく心が痛みました。ふくよかなだけで、なぜここまで理不尽な目に合わなければならないのか…。

泣きながら水着で帰宅する途中、サラはいじめっ子たちが殺人鬼に拉致されるところを目撃します。短編では主人公は知らぬ存ぜぬを決め込み、いじめっ子たちを見捨てることが示唆されるのですが、この映画はここから分岐していきます。私は殺人鬼が一度はサラを見逃したものの、事件の発覚を恐れて殺害目的でストーカーしているのかと思いました。でも殺人鬼はサラのいじめられているさまを見て、自分の孤独感と重ねたのか?彼女を気遣う様子を見せます。サラも殺人鬼を恐れながらも、彼の「優しさ」に惹かれてしまいます。

サラの行動に一貫性が無いと考えて評価を下げる人もいるような気がします。でもいじめられたことと、良心はまた別のものです。私だったらこんないじめっ子は早くタヒねばいいと思いますが、サラはすごく良い娘なので葛藤しちゃうんですね。最後の彼女の選択も見どころです。

いじめっ子の一人はサラとおそろいのピンクのブレスレットをしており、少し前まで親友だったようです。2人のブレスレットは時間の経過とともに、徐々に破壊されていきます。最後に完全に切れてしまう場面は、幼馴染の友情モドキが終わり、サラが大人の女性に成長したという意味なのかなと思いました。

頼金鳥雄