「痛みを感じ取れる存在でありたい」52ヘルツのクジラたち chikuhouさんの映画レビュー(感想・評価)
痛みを感じ取れる存在でありたい
多くの人に読まれ、また支持された原作を映画化することは大変なことであるけれども、この原作にある人の優しさや、共感する、認められる存在に自らもなりたいと多くの読者は思ったことだろう 虐待を受ける、無視をされる、そういった日常が続くと、人間は意欲を失い、言葉も表情も失っていく 従順であるということは「あきらめ」の裏返しでもあるし、従順な「よい子」を作り上げていく恐ろしさ、危うい「親」がきっと私たちの周りにもたくさんいることだろう そんな子どもを救い出せる「おとな」と出会わなければ、子どもたちはどうなっていくのか、「通報して児童相談所につなぐ」ことが、救い出せる「おとな」と出会える方法なのか 自らその痛みを訴える術をもたない人の声を、痛みを感じ取れる存在になりたい、と思う
「市子」と共に杉咲さんの演技は、普段のインタビューの表情とはまったく異なり、この人しかいない、と思わせるものであったし、志尊さんは同年齢の俳優さんにはない穏やかさと安心感を備えられているが、このむずかしい役をやりきったと思える 小野さんは一昨年「ほどけそうな、息」で虐待児を救えなかった児童相談所の新人ケースワーカーを主役で演じられていて、本作で子どもを支えようとする演技と重なった ムシは「虫」だけど「無視」でもあり、気づかれない、わざと気づかない、そんな存在にはなりたくない
(3月7日 イオンシネマりんくう泉南 にて鑑賞)
コメントする