「【"二つの魂の番い。”今作は児童虐待やトランスジェンダーの悩みと言う重いテーマを絡めながら、その中で孤独な心を持ちながら必死に生きようとする人達や、彼らを支える人を描いた作品である。】」52ヘルツのクジラたち NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【"二つの魂の番い。”今作は児童虐待やトランスジェンダーの悩みと言う重いテーマを絡めながら、その中で孤独な心を持ちながら必死に生きようとする人達や、彼らを支える人を描いた作品である。】
ー 序盤から中盤にかけては、観ていて可なりキツイ作品である。-
■キコ(杉咲花)は、母(真飛聖)から義理の祖父の介護を命じられ、毎朝4時に起きて3年間も面倒を見ている。だが、祖父は誤嚥性肺炎を起こし、キコは、母親から酷く殴られ、”アンタが代わりに死ねば良かったのよ!”と罵声を浴び、フラフラと歩く中、安吾(志尊淳)に助けられる。脇には高校時代からの親友ミハル(小野花梨)もいる。
二人は、キコから事情を聴き、余りの過酷な状況に絶句する。
そして、ある日安吾から”52ヘルツのクジラ”の鳴き声が録音されたテープをプレゼントされる。
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何とか立ち直ったキコが働く会社で、キコはある切っ掛けでその会社のボンボン専務、チカラ(宮沢氷魚)と恋仲になり、一緒に高級マンションで住み始めるが、安吾はキコに”あの男といては駄目だ。アイツは君を不幸にする。”と説得するが、キコは且つて自分が愛していた安吾にその思いを伝えていたのに、”君の幸せを祈っている。”と言われた事で関係を続けるが、チカラは安吾が言っていたように、DV男の本性を表す。
そして、自ら命を絶った安吾がチカラに読ませるために残した遺書を読みもしないで、コンロで燃やす姿を見た時に、キコは包丁で自らの腹部を刺す。
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キコは、一人で海辺の近くの家に住み始める。
そんな中、雨の中、腹部の傷のために倒れ込んでいたキコに傘を差し出してくれた少年。彼は身体中に、且つての自分の様に痣がある。そして、彼の母親コトミ(西野七瀬)は、彼の事を”ムシ”と呼び、男と街を去る。
◆感想
・今作で”52ヘルツのクジラ”であるのは、キコと安吾と“ムシ”と母に呼ばれた”愛”である事は観れば分かる。
そして、”キコと安吾”、”キコと愛”こそが”魂の番い”で結ばれた人たちなのである。
・安吾が実はトランスジェンダーであると分かるホルモン剤を打つシーンが、前半一瞬映されるが、あのシーンから安吾がキコを深く思いながら、キコの想いに対し、”君の幸せを・・。”と言うシーンは、彼の辛さを語っている。
・キコの高校時代の友人ミハルの存在は、観ていて心が潤う。彼女は突如消えたキコを職を辞してまでして、探しに来るのである。
・キコとミハルが少年の”家族”を探しに、長崎に行った時に明らかになった少年の名前”愛”。彼を愛していた祖母が既に亡くなっていたが、はす向かいの家のオバサン(池谷のぶえ)の家で分かった事実。そして、渡された笑顔で祖母と観覧車の前で映された写真。
<家に戻り、キコとミハルと愛が川の字で寝ていた時に、キコは愛が居ない事に気付き、写真に書かれた”サヨナラ”の言葉を見て、心当たりのある少年がキコに傘を差し出してくれた桟橋に駆けて行く。
少年は、海に飛び込もうとしていたのだろうか。ぼんやりと早暁の中に立つ少年に向かいキコは”死んでは駄目!”と言って少年を抱きしめる。
そして、二人の未来の幸せを願うかのように、離れクジラが海の名から現れ、大ジャンプをするのである。
今作は、児童虐待やトランスジェンダーの悩みと言う思いテーマを絡めながら、その中で孤独な心を持ちながら必死に生きようとする人達や、彼らを支える人を描いた作品なのである。>