「グロい描写を必要とするシリーズの行き詰まり、シリーズの宿命」イコライザー THE FINAL クニオさんの映画レビュー(感想・評価)
グロい描写を必要とするシリーズの行き詰まり、シリーズの宿命
上品なデンゼル・ワシントンに似合わないグロい描写と滅法強すぎる主人公を納得し受け入れれば、絶好調の快作でしょう。やたら強い孤高の正義漢ってのは、公開が重なった「ジョン・ウィック」のキアヌしかり、主演作頻発のリーアム・ニーソンもB級で頑張っている。その昔はチャールズ・ブロンソンが美人女房を相手役に一匹狼で頑張ってました。
ハリウッドは最初にド派手な掴みシーンを展開し、一挙に観客を引きずり込むのがほぼ定番に。シチリア島での凄惨極まりない殺戮が怒涛の展開、さすがにメジャー・スタジオが手掛けるとグロい描写にも節度があり、安っぽいキワモノ感は全くない。今回は100%イタリア製に拘り、夢のような風光明媚の観光地でのロケーション、さらにスタジオ撮影もイタリアのチネチッタスタジオで、とクレジットされる。隠居の身に相応しい人情の町が、しかし傍若無人な一部のワルに支配されて、マッコールの周囲の善人達にも被害が及び否応なく立ち上がる。ほとんど「用心棒」の趣です。
昨今は妹エルの活躍が多く、先輩たるダコタ・ファニングがいつのまにか大人になったような印象で、最初の登場シーンではアマンダ・セイフライドかしらんと思ったくらい。カフェの美人店員さんと親しくなるも、怪しげな関係には一切突入しないのがいい。デンゼルも近頃は息子の活躍が大きく、2度のアカデミー受賞者にとって無理することはない。そんな脱力感も漂い本作の主人公とも少し重なってくるのがミソ。
ただ、主役ですから強いのは当たり前、ですがマーベルの荒唐無稽とは異なるわけで、さりとてキアヌのように殆ど漫画の世界でもない、そんな大人の雰囲気が売りの本作で、あまりに強すぎ圧巻なのが少々白けもする。マーシャル・アーツの如くの瞬間技の連続なのだから。リーアムのように姑息な設定を受け入れてしまうと、B級感が出てしまう悩ましさもある。
邦題のタイトル「The Final」なんて嘘っぱち、原題は単に「3」で主人公ロバート・マッコールはラストシーンでも健在で、主演のデンゼル・ワシントンもまだまだ元気のご様子。だから「4」の可能性もないわけではない。ファイナルと謳って鑑賞を煽るわけですね。しかも予告編では盛大にカンツォーネが鳴り響くものの本編には全く鳴らない。この辺りの宣伝方法も見直す必要がありましょう。