劇場公開日 2023年10月6日

「今度は絶対正義だマッコール !」イコライザー THE FINAL tkさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0今度は絶対正義だマッコール !

2023年10月10日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

知的

とても楽しめました。

大好きな映画があります。
トレーニングデイです。
私の中ではトレーニングデイでデンゼルが演じたアロンゾは全映画の中で最も怖いキャラの一人・・・。
あの目付き、あの笑み、あの言葉遣い、あの思考回路、歪んだ正義、捩じれた倫理観・・・どれをとっても最恐の悪人です。
いや、こんな人間いないのかもしれないが「いてもおかしくない・・・いたとしたらこんな人間に目を付けられたら一巻の終わりだ・・・」と思わせる完全な悪人を生々しく演じきっており、ホラー映画より身が縮む思いをした映画です。
監督はアントワーン・フークアという方。
トレーニングデイからこの監督さんの作品は追い続けています。
この監督さんは悪や悪人をとても魅力的に描く監督さん。
悪なのですがでも魅力的なんです。
怖いのにアロンゾを再度見たいという欲望に駆り立てられます。

イコライザー THE FINALはそのアントワーン・フークア監督とデンゼル・ワシントンが何度目かのコンビを組んだ最新作。

本作でも悪の組織が魅力的に妙にリアルに描かれています。
厳つい体型を誇示し身体を這うタトゥーをだらしない服装からちらつかせ徒党を組んでバイクで街中を我が物顔で走り回り住民を威嚇する反社的な一党。
一見、どの街にもいる困った若者たちにも見えなくない。
しかし彼らが街中を走りたどり着く場所は、高級車が何台も止まりさらにデカい身体を黒スーツで覆い物腰や所作は社会的でさえありながらしかし人の命を何とも思わない残忍さも持ち合わせる強烈にガバナンスが効いた組織的な巨大な悪を感じさせるマフィアの元であった。
こういったシーンを通して我々が街中で見かける小さな些細な悪は、辿っていけば社会全体へ強いインパクトを持っている巨大な悪の組織の氷山の一角に過ぎない、こんなことを分かりやすくそして説得力を持って示したりする。
本当に悪や悪の組織を描くのがうまいです。

本作で更に魅力的に描かれているのは悪に対する光の部分です。
金銭的裕福はないかもしれないが慎ましい人々の生活、真っ当に生き支え合い助け合う人々、一言二言交わすすれ違った街の老人とのささやかな会話、人々から向けられる小さな優しい好意、美しい街並み、愛しい家族、そして少しずつ主人公がその街や人々に溶け込んでいく様子・・・
悪があるから光が際立つのか、光あるところに影は生まれるものなのか、本作ではこの光の部分をとても丁寧に悪との対比という形で描き出していく。

作品の性質上、この光が悪に蹂躙されるストーリー展開は明白でありだからこそ悪に対する怒りややりきれない思いが丁寧な光の描写の過程で募っていく・・・
リアルな悪が描かれているからこそここの感情移入は高まります。

冒頭であげたトレーニングデイのデンゼル演じる完全悪アロンゾは私利私欲の限りを尽くした結果、さらなる巨悪に打ち倒される。
闇はさらなる闇に飲み込まれ、きっとそのさらなる闇はより深い濃い闇に飲み込まれる運命なのだろう。
この輪廻の中に飲み込まれることで最悪・最恐の悪アロンゾが消滅するストーリーであった。

イコライザー THE FINALでは悪と光の対比を明確に行い、光側を助け支える絶対的な力を持った存在としてデンゼル演じるマッコールが描かれる。
映画の中で時間をかけて丁寧に描かれるのは悪と光の対比であり、マッコールが悪を打ちのめすシーンではない。
むしろそこは絶対的な力でとても速やかに確実に正義が実行されていく。なんならその時点で既に悪側の逆転があり得ないことは意図して明らかにして絶対的に正義が実行されていく。
しかしそこに物足りなさや淡白さは一切感じず、悪と光の対比を丁寧に描いたからこそのカタルシスが大きく存在している。
このカタルシスがエンタメとしての満足度を満たしてくれる。
絶対的な正義の存在であるからこそ今自分の目の前の悪だけを打ちのめす行為に疑問を感じ葛藤するマッコール。
隣の街に行けばきっとまた違った悪が根を張っているのだろう。自分の力を使って人々を助けることが正しいのならば、なぜ今目の前の悪にのみこの力を下すのか・・・。全世界で至るところでこの力を行使することが本来なのではないか・・・。それが出来ないなら等しく全てに干渉するべきではないのではないか・・・。
この悩みの末しかし今目の前にある悪とそれに抗う術を持たない光を看過することができず己の絶対的な力で悪を打ち砕き光を助けるマッコール。
この人間味溢れる心情がドラマとしての満足度を満たしてくれる。

トレーニングデイでは絶対悪として存在し、更なる悪に飲み込まれることで消滅するアロンゾを演じたデンゼル。
イコライザー THE FINALでは絶対正義として存在し、その力で悪を完全に打ち砕くマッコールを演じたデンゼル。
この対比。このシンメトリー。
これはもはや二つで一つの作品なのかもしれない・・・。

イコライザー THE FINALも好きな作品になりましたし、トレーニングデイもより一層好きになりました。

tk
かせさんさんのコメント
2023年10月15日

圧倒的戦闘能力を持ちながら、暴力を振るう自分が嫌いな描写がそこかしこに点在していて、そこがマッコールというキャラクターの深みになってますね。
まあお仕事始まるとチャッチャと片付けちゃうんですけど。

かせさん