エディントンへようこそ : 特集
【この町、SNSで大炎上中…非難殺到・リプ大荒れ】
コロナ流行中、マスクしろ・しないの口論が、まさか
…世界で炎上拡大中「絶対に許すな」「町ごと滅べ」
怒号が飛び交う“前代未聞の異常事態”を総力取材!

※この記事は2020年を舞台にしたフィクションであり、
2020年現在、世界中でコロナが大流行するなか、「マスクをする・しない」というしょうもない理由が発端で、アメリカ全土を巻き込む大騒動になった町があることをご存知だろうか?
その騒動は世界中で報じられ、マスク問題を飛び越えて
「人種差別・暴力警官を匿う町を絶対に許すな」
「俺は住民たちの勇気を支持する」
「ここ住んでるけどマジでしょうもないよこの町」
「市長がなんか胡散臭くて草」
「いっそ町ごと滅んでしまえばいい」
など非難轟々、大炎上に発展している。
一体、この町になにが起きているのか? 取材班は真相を確かめるべく、アメリカへ飛んだ。
●のどかな田舎町・エディントンが“地獄のSNS大炎上” ことの発端を調査すると…

ニューメキシコ州、エディントン。広大な砂漠の真ん中にぽつんとある、地図から見落としそうなほど小さな町だ。お世辞にも活気があるとは言えない。本来なら、静寂だけがこの町の友だったはず。
しかし今、この町は“業火”に包まれている。世界中から浴びせられる罵詈雑言、殺害予告も含まれたヘイトスピーチの嵐。SNSを開けばエディントンの名が拡散され続け、ニュース番組も連日この異常事態を報じている。

住民への聞き込みで浮かび上がってきた“発火点”は、あまりにも意外な、そしてあまりにも些細なものだった。
「まただよ。市長と保安官が言い争ってる」
●白昼のスーパーマーケットで、事件は起きた。

スーパーマーケットに勤める店員Aさん(女性)は、興奮気味に当時の様子を語ってくれた。
「もう、とんでもない騒ぎだったわよ! まるで決闘みたいだったんだから。うちのスーパーに、マスクをしていない男性客が入ってきて、店長が注意しても全然聞かなくて困っていたの。そうしたら、たまたま居合わせた市長さんが割って入って、その男を追い払ってくれたのよ」

Aさんによれば、市長は日頃から感染対策を徹底し、ロックダウンも決断した“町の守護神”的な存在だという。
「市長さんは本当に頼りになるわ。店にいたお客さん全員で拍手喝采! まさにヒーローよ。でもね、空気が凍りついたのはその直後」
なんと、同じくその場に居合わせた保安官が、市長に異を唱えたというのだ。しかも、保安官自身も“ノーマスク”だったというから驚きだ。
「『追い出すのは権利の侵害だ』って。保安官さんも普段、町のために尽くしてくれてるんだけどねえ……」
店内の緊張は一気に最高潮へ。
「市長さんも言い返して、保安官も言い返して、レジの前で大の大人がギャーギャー言い合ってるんだから、もう世も末よね。市長さんに比べて保安官ときたら…一体何を考えているんだか」

「その日から、2人がケンカしてるのを度々、見かけるようになったわ。この前なんか、道端で睨み合ってて、お互いの顔が触れそうなくらい至近距離なのに『ソーシャルディスタンスをとれ!』って怒鳴ってたの。コントかと思ったわ」
我々取材班は、保安官の真意を確かめるべく、本人に取材を申し込んだ。すると即座に「OK」の返信があり、独占インタビューを取り付けることに成功した。(なお、市長にも依頼したが、丁寧かつはっきりとしたお断りの連絡をもらった)
しかし――取材当日、指定された場所に保安官は現れなかった。理由の説明もないドタキャン。なにかあったのだろうか。
●マスク論争は“騒動の始まり”にすぎなかった…保安官がまさかの「市長立候補」 市長候補(保安官) vs 現市長の仁義なき争いが始まる

騒動の中心人物が、現職の市長と保安官であることは間違いない。
取材メモ:市長と保安官、それぞれの「家庭の事情」
感染対策のリーダーとして信望を集める市長だが、実はその足元は揺らいでいるとの噂だ。「市長の息子さんが、大人数のパーティーに参加してどんちゃん騒ぎしているのを見た」という情報が取材班に寄せられた。
一方、保安官の家庭環境も複雑だ。近隣住民は声を潜めて語る。「奥さんと、義理のお母さんが、かなり偏った陰謀論にハマっていて、保安官もとっても悩んでいるみたい。いや、むしろ影響を受けているのかも?」。家庭内の“洗脳”があるのだろうか?
なお、以下の画像の人物(陰謀論系YouTuber)が、町に出入りしている姿も目撃されている。

しかし、それでもまだ疑問は残る。ただの言い争いが、なぜ世界中が注視する騒動へと発展したのか?
結論を述べるが、スーパーマーケットでのケンカは始まりにすぎなかった。 炎上を加速させたのは、保安官が突然「市長になる」と宣言したことが一因だった。
保安官は立候補動画をSNSにアップし、なりふり構わぬ選挙活動を開始。あろうことか警察業務で使用するパトカーを「街宣車」に改造し、部下たちを選挙スタッフとして連れ回し、その模様をネットで拡散し続けた。
※常軌を逸した選挙活動の模様を、以下に掲載する(いずれも地域住民提供)
「動画を再生できません」と表示されている場合は、こちらのURL(https://youtu.be/txoJQXHXvgo)から閲覧してください。

この暴挙ともいえる選挙活動により、市長と保安官の対立は決定的なものに。ギリギリのラインで保たれていた“大人の対応”は崩壊し、敵愾心むき出しの小競り合いが連日、続いた。
エディントンの町は、法と秩序を守るべき2人の男によって、徐々に無法地帯へと変貌していったのである。
●様子がおかしくなっていく保安官がネット上で拡散 瞬く間に世界的な注目を集め、前代未聞の騒動へ…

騒動をさらに拡大させたのは、町で行われたデモ行進への「鎮圧」だった 。保安官率いる警察隊が、デモ参加者を暴力的にねじ伏せている(ように見える)一部始終が、SNSに投稿されたのだ。
火に油を注ぐように、件のスーパーマーケットでの「マスクしろ・しない問答」の盗撮映像も流出。「正義の市長」VS「横暴な保安官」という対立構図に、ネットが瞬時に沸き立った。

YouTuberたちはこぞって面白おかしくリアクション動画を投稿し、ニュース番組も連日トップで報道。閉塞感と退屈なニュースに飽き飽きしていた世界にとって、この田舎町は格好の娯楽となり、エディントンは瞬く間に「全米で最も刺激的な町」の称号を得てしまったのだ。
それ以後、保安官の言動はさらにエスカレート。近隣住民は違和の声を唱えているが、一方で、一部で熱狂的な支持者が現れてもいる。

ある男性(50代)は、涙ながらにこう語る。「保安官は、この狂った町で唯一の『誠実な人間』だ。彼だけが俺たちの痛みを理解してくれているんだ!」
町の熱気は、危険な領域へ突入しようとしている。
●取材終了。帰国の準備を進めているさなか…急転直下の異常事態が発生

突如、通りで女性の悲鳴があがった。
犬を連れた女性が、半狂乱で携帯電話に叫んでいる。警察に通報しているようだ。
一体どうした? ただならぬ気配を感じ、駆け寄ろうとした我々の目に飛び込んできたのは――。
※ウェブ版での公開はここまで。炎上騒動の結末や、保安官が我々の取材をドタキャンした理由、イケメン市長の“裏の顔”、市長と保安官の過去に「人には言えない秘密」など、全貌は
【ネタバレなし鑑賞レビュー】衝撃、爽快感、銃撃戦あり。そして、「今」を生きる私たちが目撃すべき“底なしの価値”もあり。なるはやで観て!

以上、取材記風で「エディントンへようこそ」作品紹介をお届けした。小さな田舎町がいかに異常な炎上騒ぎを起こしているか、その一端を感じていただけただろうか。
しかし、あえて言わせてもらいたい。上記の騒動など、この映画が隠し持つ「真の爆弾」の導火線にすぎない。あくまでも“物語の前半部分”なのだ。後半はもっと衝撃的な展開へと突入していく……。

ああ、これ以上はなにもいえない! しかし、「もう少し感想を聞きたい」という方のために、ネタバレには十分に気をつけつつ、シズル感たっぷりにレビューをお届けしたい。
よろしければ、最後までお付き合いいただければ幸いだ。
●【観た直後の心境】
すんごい映画だった…ヤバすぎる、面白すぎるだろ…衝撃、爽快感、アクション、銃撃戦、説明不能の鑑賞後感。そして、この物語は“あなたと無関係ではない”。
本編を最後まで観た直後の私の率直な感想はこうだ。「すんごい映画だった…ヤバすぎる、面白すぎるだろ…」。
後半1時間のことは、今でも夢だったんじゃないかと錯覚を覚えるほど。この衝撃は早く観てほしい。しかし、とてつもなく嫌な気分になったりはしない。ねっとりとした不安や不快感ではなく、名状しがたいヒリヒリ感と高揚感にまみれており、カーチェイスがあり、銃撃戦があり、もはやジェットコースターに乗せられたような爽快感すら覚える、極限の衝撃体験――。

なんだこれは、なんなんだこれは……!! アクセルのかけ方がおかしいよ、監督!とツッコミを入れたくなる一方で、そのあまりの光景に「ふざけんな、めちゃくちゃ面白いわ!」とねじ伏せられてしまう。このカオスこそが、本作の最大の魅力かもしれない。
さらに言うと、あのアリ・アスター監督が、初めて現代社会・時事的問題に強くリンクする作品を創出したという点に、底しれぬ“価値”がある。そう感じるのは私だけではないはずだ。
ネットとSNSの情報を鵜呑みにし、YouTubeで陰謀論や扇動映像を見ては、自分と似た意見ばかりが増幅される「エコーチェンバー」のドツボにハマる。今の日本でもそこかしこで起きているし、これを読む“あなた”も無意識のうちに取り込まれているかもしれない……そんな「誰にでも当てはまる現象」を、この映画は強烈な皮肉とともに描いている。
だからこそ。この映画は、あなたと無関係ではないのだ。
●【特に面白かったのが…】
“おじさん2人の争い”がとにかく最高すぎた しかし!それでいて非常に複雑でスリリングな人間ドラマが乗っかってきて…むちゃくちゃうまい、この映画!満足度がえげつない!!

繰り返し書いてきたように、物語の主軸となるのは、ホアキン・フェニックス演じる保安官と、ペドロ・パスカル扮する市長の対立だ。
2人に加えてエマ・ストーン、オースティン・バトラーというアカデミー賞級の名優たちと、アリ・アスター監督という“異才”。世界最高峰の才能が集結し繰り出されるのが、言ってみれば「いい年ぶっこいたおじさん同士の小競り合い」であることが心底面白い。
互いに「自分が正しい」と信じ込み、引くに引けなくなった男たち。2人が真剣であればあるほど滑稽で、笑えてしょうがない。

特に注目してほしいのが、「音楽のボリュームを上げたい市長、下げたい保安官」という小学生レベルの攻防だ(本当にあるんだよそういう場面が)。
何が起こるかはお楽しみに。詳しくは言わないが、ホアキンの驚いた表情は必見だ。極限まで圧縮された緊張状態は得てして笑いに転じるし、笑っちゃいけない状況だからこそ笑えてしまう……。
この「笑い」と「緊張」の絶妙なバランスこそが本作の正体だと思う。アリ・アスター監督は今回、極上のエンタテインメントを仕掛けてきたのだ!

とはいえ、それだけで終わらないのがこの監督のすごみだ。人々のあらゆる行動の根底には「恐怖」があり、「恐怖が二次感情である怒りに転じ、その怒りがどう社会を狂わせていくか」というメカニズムを鮮烈に描き出している。
正義と暴走、支持と扇動、そして人間が集団になった時に生まれる恐ろしさ。物語は単なるドタバタ劇を超えた、重厚でエキサイティングな人間ドラマへと昇華されていく。
めちゃくちゃに“上手い”ぞ、「エディントンへようこそ」――!
●【最後にひとつだけ、警告しておこう】

この物語には“本物の悪党”が登場する。痺れるほどの「悪」が――。
それが誰なのか、そして何を象徴しているのか。答えはぜひ、ご自身の目で確かめてほしい。
特に、政治家や官僚、人の上に立つポジションにいる方々は、本作を必修科目として観ておくべきではないだろうか……。






