劇場公開日 2022年7月8日 PROMOTION

神々の山嶺(いただき) : 特集

2022年7月4日更新

“今年No.1”が出たッ! 伝説の人気漫画を狂気的な
熱量で映画化…絶対に観るべき“驚愕作” ある映画
記者が魂を震わされた極上の映画体験を全力レビュー!

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ひと目観た瞬間、魂がスクリーンに吸い込まれた。狂気とも思える筆致で描かれたそれは、僕に「現時点での2022年No.1作品」と、いとも簡単に確信させた。

タイトルは「神々の山嶺(いただき)」(7月8日公開)。興奮の一端に触れてもらうため、鑑賞メモの一部を抜粋してみよう。

「山登りの映画ではない。強烈な人間ドラマとミステリー」「安易な理解を拒む作画と物語が、生きる意味を問いかけてくる」「狂気的な品質の原作を別のフォーマットに転換するには、作り手も狂気的にならざるを得ない」「今後数十年にわたって語り継がれる歴史的傑作」

映画.comの同僚や、映画をそこまで観ない友人たちにも、自信を持って激烈に推すことができる一作。この特集では、「神々の山嶺(いただき)」を鑑賞レビューや著名人の感想を交えて解説する。(文/映画.com編集部・尾崎秋彦)


【予告編】究極の冒険ミステリーが始まる

【概要とあらすじ】

「陰陽師」などの夢枕獏が原作、「孤独のグルメ」などの谷口ジローが作画の伝説的人気漫画を、フランスで長編アニメ映画化。

「登山家マロリーがエベレスト初登頂を成し遂げたかもしれない」――いまだ未解決の謎が解明されれば、歴史が変わることになる。

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カメラマンの深町誠(声:堀内賢雄)はネパールで、何年も前に消息を絶った孤高のクライマー・羽生丈二(声:大塚明夫)が、マロリーの遺品と思われるカメラを手に去っていく姿を目撃。深町は、羽生を見つけ出しマロリーの謎を突き止めようと、彼の人生の軌跡を追い始める。

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やがて二人の運命は交差し、不可能とされる冬季エベレスト南西壁無酸素単独登頂に挑むこととなる。


【レビュー】編集部・尾崎の“今年No.1”(現時点)
これは山岳ものではない 人間の“崇高な精神”の物語

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編集部・尾崎秋彦:まず前提として、僕は漫画版「神々の山嶺」のファンである。数年前に訳あって紙の漫画類はほぼ処分してしまったが、「神々の山嶺」と藤子・F・不二雄のSF短編集だけは手元に残し、折に触れて読み返している。

それだけに、本作が日本公開されると聞いて心躍った。谷口ジローの異常とも言える緻密かつダイナミックな作画を、損なわずアニメーション化するなど不可能だと思っていたが、本作は原作人気の高い現地フランスで絶賛されたと聞いていたからだ。期待にワクワクしつつ、本編を鑑賞することとなった。


[アニメーション]執念にも似た“尋常でない熱量”が、観る者を奮い立たせる

冒頭、映し出されたのはエベレストの風景。すさまじいクオリティのアニメだと“秒”で悟る。あ、こりゃすげえ……と呼吸を忘れる瞬間が、始まって1分もしないうちにやってきたのだ。ドラム缶を金属バットでジャスト・ミートしたような衝撃だった。

吹雪に見舞われるエベレスト山頂、風のなかに含まれる粒子すら立ち現れている。体感気温-60℃の世界のはずなのに、触れれば火傷してしまいそうなほどの熱気が伝わってくる。2Dの画面で観る間、目や耳だけでなく肌や髪の毛にいたる全身に映画的刺激が駆け巡る。まるでMX4Dや4DXなど体感型上映システムに匹敵するほどの没入感だった。

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生命体の存在を否定する過酷な環境だけではない。70~80年代の日本の風景も、武富士の看板や銀座の森永地球儀ネオンと思しきサインなどが目を引く街並みから、フォークソングに出てきそうな羽生(主人公)のアパートの一室、ロープから手が離れる刹那など、全ての背景・舞台・人物が圧倒的な精密さで描かれている。

一体、ここまでの映像を創出するのに、どれだけの時間と人員と手間と費用がかかったのだろうか? 素人目にも執念すら感じられるほどだ。もともと原作は谷口ジローの作画がそうだったように、異常な品質を誇る作品だったが、本作もしかり。狂気的な作品を別のフォーマットに転換するには、作り手も狂気的にならざるを得ないのだろう。

そして、残念にも思った。本編尺が約1時間30分ほどであることを……本当に面白かったので、もっと長く観ていたかった!

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[物語]容易な共感を拒み、圧倒的な情動を与えるドラマ なぜ人は誰よりも早く山の頂上を目指すのか?

ただアニメーションがすごいだけではない。羽生という“生きる意味を置いてきた”クライマーと、深町という“生きる意味を求める”カメラマンが織りなすヒューマンドラマは、観る者を言語化できない情動へ誘う……否、突き落としていくのだ。

本作は、他人から疎まれようとも山に登り続ける羽生の生き様を、大げさでなくあくまでも淡々と追うことで、情熱は人に伝染し、狂気は情熱よりも素早く・深く人に伝染することを効果的に描き出している。

世界最高峰の山々に挑むということは、遭難すれば普通は死、よくて凍傷による指の切断などが待ち受ける、ということでもある。ほぼ地獄の環境に挑む男たちの行動は、僕のような一般人の“容易な理解”は拒む。が、それでも、強い眼差しで何かを真剣に問いかけてきているようにも思えた。

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そして、力強いドラマにミステリーが絡み合う。マロリーはエベレスト登頂を果たしたのか? これは実際に登山の歴史に残っている大きな謎だ。深町が真相を追う様子がまた別種のスリルを加え、面白さが巨大な風船のように膨れ上がっていく。ドラマによる感情的な興奮と、ミステリーによる論理的な興奮。感覚の反復横跳びの後に、やがて物語を言葉ではなく全身で理解できる瞬間がやってきた。

なぜ人は誰よりも先に、より高い山の頂きを目指すことに命をかけるのか? しなくても生きていけることに、なぜ命をかけるのか――これはただの山岳映画ではない。人間の崇高で愚かな営みを描き出すことで、「人はなにゆえ生きるのか」という究極の問いを投げかける生命の賛歌だ。

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[今年ベスト]数十年に渡り語り継がれるであろう“歴史的傑作” あなたは何を受け取るか?

静かな狂気をはらんだアニメーションと、異常な輝きに満ちた物語。さらに澄み切った山頂の空気を震わせるような音楽も、日本語版声優陣の熱演も、得も言われぬものがある。僕の人生に殴り込みをかけ、そのまま心の奥深くにどっしりと居座るような作品だった。

本作「神々の山嶺(いただき)」を観て、押井守の「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」や、大友克洋の「AKIRA」などを観た当時の人たちは、こんな衝撃を味わったのだろう、と思った。ワンショットに執念と狂気がこびりついているような、まるで怨念のような映像。松本大洋や今敏、寺田克也の影響も濃く見て取れた。

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一方で、最注目は約3分間のラストシーン。羽生と深町、それぞれに短い“語り”がある。じっと耳を傾けてほしい。しかし、意味を理解しようとはしないでほしい。本編約1時間30分、没入することができたのなら、きっと大切な何かが受け取れるはずだ。

僕の現時点での“2022年No.1作品”。今後20年、30年にわたって“歴史的傑作”と語り継がれていっても、なんら不思議ではない。


【名クリエイターたちはこう観た】松本大洋らも心酔
「製作陣の心意気を感じた」「鋭い眼光が睨みつける」

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映画.com編集部員だけでなく、著名なクリエイターたちも本作に絶賛コメントを寄せている。以下に、その一部をご紹介しよう。


●松本大洋(漫画家/「鉄コン筋クリート」「ピンポン」など)

獏さんと谷口さんという大きな二つの頂きに挑んだスタッフの心意気を、ひしひしと感じました。
エベレストと東京を描く色彩がとても美しく、クライマーたちは物悲しく格好良かった。

●石塚真一(漫画家/「岳 みんなの山」「BLUE GIANT」など)

谷口ジロー、夢枕獏両氏の「神々の山嶺」は、
フランスでこんなにも愛されているのだなあ、と感じる圧倒の映像でした。
何度も歯を食いしばった。
そして、孤高の美しさにグッときた。
ありがとうフランス!!

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●久住昌之(漫画家・音楽家/「孤独のグルメ」「散歩もの」)

驚いた。谷口さんの絵の「神々の山嶺」は、絶対に映像化できないと思っていました。
しかし、漫画からも独立した、素晴らしいアニメ作品に仕上がっていた。
静かで、険しく、美しい。
音楽の豊かさにも、嫉妬心さえ覚えました。

●しろ(イラストレーター・漫画家/「ヤマノススメ」「カメラはじめてもいいですか?」)

鬼スラ、グランド・ジョラス、エヴェレスト・・・挑む山の魅力を教えてくれたのはこの作品でした。
それが長い年月を経てまさかのアニメ映画化、あの長大で重厚な物語をスマートにまとめあげ
山岳の魅力を凝縮した素晴らしい作品へと変化を遂げていました。
肉のきしむような生々しい、それと同時に詩的にも感じる美しい迫真の映像、是非ご覧ください!

●坂本眞一(漫画家/「孤高の人」「イノサン」「#DRCL(連載中)」)

小説によって言語化され、漫画によって可視化された8000メートル峰の凍りつくような死の恐怖を、アニメーションならではの手法で否が応にも「体感」させられてしまう映画。
生命の存在すら許さない神々の領域への挑戦はあまりに絶望的だ。
この世の全てを擲ち、雪煙舞う山頂を目指す挑戦者達の鋭い眼光が僕を睨みつける。
「お前は何の為に生きているのか」と。


【解説】「神々の山嶺」の“すごみ”とは?
原作、構想期間、評価、声優陣から紐解く究極の品質

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最後に、本作の見どころを改めて解説。知れば知るほど、映画館へ足を運びたくなるだろう。


[伝説の原作漫画]「餓狼伝」夢枕獏×「孤独のグルメ」谷口ジローの究極“冒険ミステリー”

作品のベースとなったのは、世界中で100万部以上を売り上げた夢枕獏による傑作小説を基に、谷口ジローが作画を担当した漫画「神々の山嶺」。日本ではネット上を中心に伝説的漫画として知られており、第5回文化庁メディア芸術祭マンガ部門・優秀賞に輝くなど高く評価されている。


[製作期間7年]フランスで執念のアニメ映画化…旋風巻き起こす

原作漫画はフランスで絶大な人気を誇っており、38万部超の大ヒットに。谷口ジローは「漫画の神様」と呼ばれており、2011年にはフランス芸術文化勲章シュヴァリエ章を受章している。

谷口の作品は同国で「遥かな町へ」「晴れゆく空」が映像化されており、「神々の山嶺」もフランスからアニメ化オファー。自身も製作に加わり、キャラクターデザインやシナリオの監修を担っていた。

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製作期間は7年におよび、その間、残念ながら谷口は2017年に死去。しかしその思いは継承され、夢枕獏が「谷口ジローにこれを観せたかった」と感激するほどのクオリティに仕上がった。

フランスでは2021年のカンヌ国際映画祭でプレミア上映された後、300館規模の大作として公開。フランス版アカデミー賞にあたるセザール賞では、最優秀アニメーション映画賞に輝くなど、アニメ版も極めて高い評価を獲得している。


[日本へ逆輸入]ついに劇場公開! トレンド入りするほど大きな話題に

そんな作品が、ついに日本に逆輸入。日本公開が報じられた際には、Twitterのトレンドに「#神々の山嶺」がランクインするほどの話題となった。

なおフランスを除く各国では、基本的にNetflixが本作の配給権を獲得している。しかし日本では、原作の誕生国であるため劇場公開が実現。映画館のスクリーンで観られるのは非常に貴重な機会なのだ。

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[豪華声優陣が結集]名シーンの雪崩、熱演の猛吹雪を浴びる94分間

日本語では吹き替え版のみの上映となるが、声優陣の豪華さにしびれまくる。深町役は堀内賢雄、羽生役は大塚明夫の大ベテラン。「鬼滅の刃」妓夫太郎役で知られる逢坂良太や、「STEINS;GATE」牧瀬紅莉栖役などの今井麻美が脇を固めている。

多くは語らない。以下の本編映像を、イヤホンをつけて観てほしい。熱演と名セリフ――物語に引き込まれ、心震わされること必至である。

【特別に解禁!】静かに、確かに“伝わる”本編映像

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