コラム:21世紀的亜細亜電影事情 - 第17回

2016年10月12日更新

21世紀的亜細亜電影事情

第17回:インドネシア映画の今(1)色とりどりの人と物語

インドネシアの首都ジャカルタ。高層ビルが立ち並ぶ大都市の片隅に、若者たちが集まるカフェ「フィロソフィ・コピ(珈琲哲学)」がある。手作り感あふれる店には、映画のポスターやイラスト、小道具が飾られている。そう、ここはかつて映画のセットだった。この小さなカフェを舞台に撮影されたインドネシア映画「珈琲哲學 恋と人生の味わい方(仮題)」が今月、日本で初上映される──。

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10月25日に開幕する第29回東京国際映画祭で、3回目を迎えるアジア映画特集シリーズ「国際交流基金アジアセンター presents CROSSCUT ASIA」。今年は「カラフル!インドネシア」と題して、インドネシアの新旧作11本を上映する。多種多様な作品から、豊かで複雑なインドネシアの「今」が見えてくる。今回は注目作品をピックアップしてご紹介したい。

多民族、多宗教、多言語国家のインドネシア。市民生活に伝統的な側面を色濃く残しつつ、急速な経済成長を遂げる若い新興国でもある。特に中間所得者層の拡大は著しく、大都市を中心にカフェ文化が花盛り。「珈琲哲學 恋と人生の味わい方」は、ジャカルタの繁華街でカフェを営む青年二人が主人公だ。オーナーのジョディ(リオ・デワント)とバリスタのベン(チコ・ジェリコ)は幼なじみ。コーヒーにかける情熱は人一倍だが、店の経営はなかなか軌道に乗らない。起死回生を図る二人は「究極のコーヒー」を求めて旅に出る。

インドネシアでこの作品が注目を集めた理由の一つに、撮影に使われたセットがそのままカフェとしてオープンしたことがある。ジャカルタ中心部に今もあるカフェ「フィロソフィ・コピ(珈琲哲學)」は、昼夜を問わず若者たちでにぎわっている。イスラム教徒が多いインドネシアでは、コーヒー片手のおしゃべりは重要なコミュニケーションの手段。カフェは主演のリオ・デワント、チコ・ジェリコがそのままオーナーになり、時おり店を訪れてファンとの交流を楽しんでいる。

にぎわう店内(筆者撮影)
にぎわう店内(筆者撮影)

また、意外に知られていないが、インドネシアはブラジル、ベトナム、コロンビアに次ぐ世界4位のコーヒー生産国でもある。ベンとジョディがコーヒー豆を求める道程は、インドネシアのコーヒー産地をめぐる旅にもなっている。ちょっとした観光ロードムービーの趣だ。

筆者紹介

遠海安のコラム

遠海安(とおみ・あん)。全国紙記者を経てフリー。インドネシア(ジャカルタ)2年、マレーシア(クアラルンプール)2年、中国広州・香港・台湾で計3年在住。中国語・インドネシア(マレー)語・スワヒリ語・英語使い。「映画の森」主宰。

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