コラム:OSOREZONE ANNEX by 映画.comホラー映画部 - 第8回

OSOREZONE ANNEX by 映画.comホラー映画部

OSOREZONEでまさかの夢実現!日本語字幕を自作してみた

突然ですが、今回は本コラムを担当する映画.comホラー映画部部員が、ホラー作品専門の動画配信サービス「OSOREZONE」を運営しながら、意外な形で「夢」をかなえてしまったお話です。

その「夢」とは……字幕翻訳家。洋画好きならきっと一度は興味を持ったことがある職業ではないでしょうか? 何を隠そうこの私、あこがれの字幕翻訳家になるため、その昔、映像翻訳の学校に通っていたんです。それが今回、OSOREZONEの特集「栄冠ショートホラー・コレクション」のラインナップ全作品で日本語字幕を制作するチャンスに恵まれました! 本稿では、その制作過程をご紹介します。

世界のホラー映画祭で賞に輝いた短編ホラーを大特集!
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今回使用したのは、映像編集ソフト「Adobe Premiere Pro」と表計算ソフト「Excel」だけ。専用のソフトウェアがなくても十分に対応できてしまうんです。

おなじみのソフトだけでチャレンジ!
おなじみのソフトだけでチャレンジ!

字幕制作のおもなステップは「ハコ切り」「スポッティング」「翻訳」の3つ。

「ハコ切り」は1枚の字幕に収めるセリフの量を決める作業。製作者に提供してもらったダイアローグリストを頼りに、「1文1情報」「1枚7秒以下」になるように区切っていきます。英語の字幕では、1枚の字幕に2人分のセリフが並ぶことがありますが、日本語字幕では原則NG。日本人ってホント几帳面!

「インベーダーズ」のダイアローグリスト
「インベーダーズ」のダイアローグリスト

お次は「スポッティング」。字幕を表示する始点と終点を決めます。下の画像のピンクのハコが、各字幕が表示されるタイミングと長さを示しています。つい見落としなのが文字情報。映像を見ながら、タイトルなどダイアローグリストにない文字情報に対してもスポッティングを行います。

文字情報も訳します
文字情報も訳します

スポッティングが終わると、字幕を表示する長さ(尺)が決まるので、Excelを使って1秒あたり4文字を目安に文字数を算出します。

日本語字幕では「1秒4文字」が目安
日本語字幕では「1秒4文字」が目安

この「スポッティング」をグッと楽にしてくれたアイテムが、SRTファイルと呼ばれる字幕ファイル。字幕の始点と終点、該当するセリフが指定されたファイルです。

12/26配信スタート「ヘルシンキ・マンスプレイニング・マサカー」のSRTファイル
12/26配信スタート「ヘルシンキ・マンスプレイニング・マサカー」のSRTファイル

特に、英語以外の言語の場合、ダイアローグリストだと誰がどのセリフを言っているのか把握するのが困難。SRTファイルがあると、最初に英語字幕で確認できるので理解がはかどるはかどる。神アイテム認定です。

フィンランド語だとチンプンカンプンで…
フィンランド語だとチンプンカンプンで…

しかし、楽できたのは実は私だけだったよう。SRTファイルの読み込みや設定がうまくいかないなど多々トラブルがあり、ビデオコンテンツ・クリエイターがひとつひとつ手作業でスポッティングをしてくれたのでした。泣ける。

ここまできて、ようやく「翻訳」作業に入ります。英語ネイティブなビデオコンテンツ・クリエイターが作ってくれた下訳をもとに、より自然な日本語でストーリーの流れを意識しながら訳文をつくります。

「Max Character」が計算値、「Character Count」が訳文の文字数
「Max Character」が計算値、「Character Count」が訳文の文字数

映像翻訳の世界で「吹替6割、字幕3割」と言われるように、字幕で伝えられる情報は実際のセリフのたった3割程度。言葉を絞り込んでも意味がしっかり伝わるように、必要な情報とニュアンスを取捨選択します。

それだけでなく、パッと見てパッと理解できることも大切。なので、ときには大胆な意訳も必要でした。一番苦労したのが「ザ・チェアマン」。この作品は、ミステリアスで複雑に入り組んだ展開が「味」で、元々の英語のセリフも遠回しな表現やほのめかしが多い。その謎めいた雰囲気を生かしながら、「伝わる」日本語にするのは難儀でした。

たとえば、監禁中の人質に対しての主人公のセリフ。「But extreme stress reliably results in stronger impressions.」

一番頭をひねったセリフ
一番頭をひねったセリフ

直訳すると「極度のストレスを与えれば、確実に印象が強くなる」といった内容。ですが、発言の意図がぼやけてしまうため「これくらいしないと/結果が出ないんです」という訳に落ち着きました。もっと「超訳」でもよかった?

最終的にこうなりました
最終的にこうなりました

訳文が完成したら、映像と重ね合わせ、配信用の動画ファイルを書き出して全工程が終了です! 短編作品とはいえ、特集全16本の総再生時間は207分。短めの長編映画2本分にも匹敵するボリュームを、約1カ月の作業期間で仕上げるのは予想以上に重労働。セリフが少ない作品のときは、内心ガッツポーズでした(笑)。

今回の制作過程で改めて思い知ったのが、字幕翻訳は制限が多くて手間がかかるということ。それは、「伝わる」字幕にするために、知恵と経験がつぎ込まれてルールが整備されてきたことの裏返しだと思います。とはいえAI興隆期ですから、全自動字幕翻訳ソフトが近い将来、登場するかもしれませんね。

世界のホラー映画祭で賞に輝いた短編ホラーを大特集!
世界のホラー映画祭で賞に輝いた短編ホラーを大特集!

「栄冠ショートホラー・コレクション」は、世界各国のホラー映画祭で賞に輝いた短編ホラーを厳選した特集企画。どれもお墨付きの作品ばかりです。つたない部分もあると思いますが、皆様にお楽しみいただけるよう試行錯誤しながらつくった日本語字幕もご堪能いただけたらうれしいです。12月26日には、ヨーロッパ編9本を追加します。こちらもOSOREZONEオリジナル字幕でお届けしますので、お楽しみに!

いますぐOSOREZONEで作品を視聴!

筆者紹介

映画.comホラー映画部のコラム

映画のことなら「映画.com」のホラー好きが「ホラー映画部」としてスピンオフ。日本中のホラーファンを、ホラー映画専門の定額制動画配信サービス「OSOREZONE(オソレゾーン)」に“感染”させるべく、Twitter(@osorezone)で日夜ホラー情報を発信中。ホラー映画だけでなく、エクストリームでファンタスティックなジャンル映画にも目を光らせてます。