コラム:メイキング・オブ・クラウドファンディング - 第4回

2015年10月14日更新

メイキング・オブ・クラウドファンディング

「見てもらってから」クラウドファンディングへ参加

大高 劇場公開に向けてはいつ頃から活動をはじめたんですか?

露木 本格的に動き出したのは映画が完成して約1年後ぐらいですね。このような映画が劇場にかかるかどうかって、対外的な評価というのがすごく大切です。「いい映画です」って言い切るために、裏付けが必要なんですね。そうでないと映画館さんが判断できない。そのため、プレミア上映が終わったら積極的にさまざまな映画祭に応募していくんです。

飯塚 ありがたいことに、PFFアワード2014でエンタテインメント賞もいただけました。

露木 いろいろな映画祭に応募して、審査員の言葉を拾っていくと、この作品は完成度の高さに評価を受けることが多いんですが、逆にそれがアダになってしまってもいる。若手を対象とした映画祭は、もうすこし尖っていたり、破天荒なもののほうが好まれるんです。でも、だとしたらなおさら劇場公開向けじゃないだろうかとも感じた。

飯塚 確かに、インディペンデントの匂いがプンプンしている方が好まれるところはありますね。

露木 でも、1年間かけて確かな手応えを感じましたから。

飯塚 最後、もしかしたらここで主人公が殺しちゃったりしたら、評価が変わったかもしれないですよね。血みどろになったら。そうしたらグランプリ取れていたかも。最後になって急にR15になってしまう。

露木 まあ、それを戦略的にやるのも手段なのかもしれませんね。そこは作家の表現というものがあるので、そこまで突き抜けることはないですけれども。

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大高 クラウドファンディングを利用しようと思ったのは?

飯塚 学校の同期だった塩出太志監督の「死神ターニャ」(13)がクラウドファンディングで宣伝配給費を調達していたので、やってみようかなと思ったんです。

露木 この作品も私がプロデュースをしたもので、いくつか賞をいただいたので公開するときにクラウドファンディングを利用したんです。塩出監督はほかの映画でも制作時からクラウドファンディングを利用していたりしたんですね。飯塚監督もそれを見ていたのでやってみようと考えた。

飯塚 あと、そのころ映画.comとMotionGalleryが協業するというニュースを見たので、これは映画.comにも取り上げられる可能性もあるな…という、合わせ技を考えました。参加してくれたのは、知り合いも多かったんですが、うれしかったのが、ロケ地の群馬の方などもいらっしゃったことです。伊参の映画祭で、すでにご覧になっているはずなのに、クラウドファンディングに参加してくれて、映画の応援をしてくれた。

露木 大高さんもクラウドファンディング中のイベントに参加していただけて、そのイベントを通じて参加者が増えたんですよ。

大高 「映画のためのクラウドファンディング入門~映画『独裁者、古賀。』『スプリング、ハズ、カム』を実例にあげて~」ですよね。あのイベントに出席された方は、映画製作に強い興味を持っていたので、みなさん熱心に聞いていらっしゃいました。

露木 飯塚監督のアイデアで、群馬の方々のように、映画を見た人の応援も募れればということで、クラウドファンディングの締め切りは劇場公開が終わってから1週間後に設定したんです。すると、やはり参加してくれる人が何人か現れた。

大高 すでに劇場で見た方で応援してくれるっていうのは、映画作品から受けた感情が強いからこそですよね。応援に対するリターン等も抜きで、作品それ自体をとても評価しているという事になると思います。

露木 メジャーと違う作品を応援してくれる人って、リターン目当てというよりも「応援したい」っていう気持ちが強い方が多いような気がしますね。

飯塚 特典で呼べるイメージがあまりしなくて、この映画に関しては見てもらってから考えてもらえればなって思ったんです。

露木 クラウドファンディングのおかげでイベントを3回できました。あと、大谷健太郎監督をはじめ、およそ30名の方よりコメントを頂き、コメント掲載チラシも2種類も作りました。プロモーションもしっかりできて、次に繋がるものになったと思います。さらに、10月10日からは、大阪シアターセブンでの公開も決まりました。

大高 クラウドファンディングという仕組は、丁寧に利用すれば、作品の可能性が本当に広まりますね。

露木 多くの人に映画を知ってもらいたいと思うものの、このくらいの規模の作品だと、ちょっと凝った宣伝をやるとたちまち赤字になる恐れがある。シンプルにデザインしたチラシを創り、映画サイトに情報を流し、手弁当でチケット売り、上映中にイベント組む。それがインディーズの最低限の宣伝なのですが、それ以外のことをやろうとすると、やはり経費がかかります。

飯塚 そこの部分をクラウドファンディングで集められればできることが広がっていくし、多くの人に映画を知ってもらえる。

露木 また、MotionGalleryでクラウドファンディングを行うことで、映画が好きな人たちにいちはやく映画の情報を知ってもらえる。存在を示せるツールになりえます。チラシ以上の情報も載せられるし、リアルタイムで情報発信ができるのもいいですね。もしかしたら大高さんの志向するところと違ってくるかもしれないですが…。

飯塚 自分の描く将来像にも上手に噛み合う仕組みだと思っています。自分は、オーダーをいただいたもの、たとえば原作がついているような映画作品をしっかりと作りつつ、オリジナル作品も作っていけるようになりたいです。いま、オリジナルの映画を撮れる機会って少なくなってきている難しい時代だと感じるんですが、クラウドファンディングの仕組みがもっと広まれば、そのハードルが低くなるような気がしています。次の作品づくりにも、活用していきたいと考えています。

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■映画「独裁者、古賀。」劇場公開情報
10月10日(日)~16日(金)
大阪シアターセブンにて19時よりロードショー
http://www.dictatorkoga.net

■ニューシネマワークショップ(NCW)
http://www.ncws.co.jp

筆者紹介

大高健志(おおたか・たけし)のコラム

大高健志(おおたか・たけし)。国内最大級のクラウドファンディングサイトMotionGalleryを運営。
外資系コンサルティングファーム入社後、東京藝術大学大学院に進学し映画を専攻。映画製作を学ぶ中で、クリエィティブと資金とのより良い関係性の構築の必要性を感じ、2011年にMotionGalleryを立ち上げた。

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