渡辺謙が全身全霊で伝えたい「日本人のもつインスピレーション」 : LiLiCoのHappy eiga ダイニング (2)

ホーム > コラム > LiLiCoのHappy eiga ダイニング > 渡辺謙が全身全霊で伝えたい「日本人のもつインスピレーション」
メニュー

コラム:LiLiCoのHappy eiga ダイニング - 第18回

2012年2月10日更新

第18回:渡辺謙が全身全霊で伝えたい「日本人のもつインスピレーション」

対談ゲスト:「ロボジー」五十嵐信次郎、吉高由里子
>>前のページから続く

リリコ:撮影が終って、みんなと飲みに行ったりすることってあったんですか?

渡辺:ないない。もう、疲れ果てちゃって。やっぱり、ずっと同じセットで7年間分やらなくちゃいけないわけだから。時間経過を含めて、すごくち密に積み上げていかなければならない。本物のはやぶさの運用では3カ月から半年かかる場面を、1シーンで表現しなくちゃいけないわけだから、疲れましたよ(笑)。でもね、現場ではみんな楽しくやっていましたよ。空気や雰囲気をつくるのが、僕のプロジェクトマネージャーとしての仕事。実際の川口先生も、みんな手をつないで仲良くやりましょうというのではなくて、ぶつかりあって作ったチームワークだったわけだしね。

リリコ:そうだったんですね~。私、謙さんの姿があまりにも違っていて、ちょっとビックリしたんですよ。試写状をもらったときに「珍しいパターンだなあ。主演はどこだ?」と思って。

渡辺:おいおい(笑)。川口先生ってすごく露出をされていますけれど、科学者のもつ空気感って全然違うんだな、僕らみたいな文科系落ちこぼれみたいなやつとは。目の奥に数式とかが見えるような空気感がほしくて、まずは本人のお姿に近づこうと思ったんですよ。

リリコ:謙さんはハリウッドで活躍しますし、日本でも映画やドラマをずっとやってこられました。ご自身が日本映画について思うことって何かありますか?

渡辺:日本映画について言うと、僕にたいした事ができるとは思っていないんですよ。やりたいと思ったってできやしないよ。とにかく自分ができる事を積み重ねていくしかない。若い監督やキャスト、スタッフも増えているわけで、その中でせめぎあっていくしか前に向かうことはできない。映画学校を作ったって教えらんない、産業そのものを振興させることなんてできない。だけど、今、一番大きな問題としては、日本の社会、お客さんの価値観、ものの考え方が大きく変化している。だから僕らは、それを映していくしかないんです。目を背けず、きちんと向き合って社会を映していくものを作っていかないといかんと思いますね。

リリコ:私は、謙さんの日本映画に対する影響力ってすごいと思うんですよ。学校は作れないかもしれませんが、謙さんという存在ですごく映画が変わったと思います。「ラストサムライ」で、アカデミー賞にノミネートされたときの取り上げられ方から始まって、みんなの注目度が変わりましたもの。

渡辺:いやいや。でも、アメリカとの距離が、遠くはなくなったかもしれないね。

リリコ:そうですよね。謙さん、次はこんな作品に出られるんだ……とか常に興味ありますし! 今回は、どういう経緯でご出演されることになったんですか?

渡辺:ここ10年くらい日本と海外を行ったり来たりしていてね。最近5年くらいかな、日本ブランドみたいなものにかげりを感じたんだよね。そういうときに、「小惑星探査機はやぶさがサンプルリターンに成功」っていう素敵なニュースが飛び込んできた。まだどこもやっていないことを成し遂げて、日本もまだまだいけるじゃん! という思いがあったんですよ。「これは今やらないと!」と感じた。外に向かって、「まだまだやれるよ、頑張ろうよ」というエールになると僕は思ったんです。その後、3月に東日本大震災があったからね。もっと、もっと意味が出て来た。日本人は絶対にあきらめないんだ! ということを見せていける映画にしたかった。2012年のなかで、この映画が、ある立ち位置をもって見ていただける映画になったんじゃないかと僕は思いますね。

リリコ:今後はどんな作品に?

渡辺:言わないよ、影響力があるらしいから(笑)。

リリコ:何かやりたい役ってないんですか? 何か言ってくださいよ(笑)

渡辺:いいじゃない、分からないほうが。「え、次これなんだ!」っていうほうがさ。

リリコ:わかりました! では最後に3つの質問があります。謙さんのなかで一番好きな映画を教えてください。

渡辺:今はね、「小さな旅人」(ジャンニ・アメリオ監督、1992)というイタリア映画が好きなんだ。本当にせつないんだけど、人が生きていくことってこういうことなんだなっていうことを伝えてくれる。

リリコ:いつも持っている宝物ってありますか?

渡辺:ものじゃないなあ。僕の宝物は人だからね。それ以外はあんまり必要ないんだよ。好きなものはあるよ。機能的で美しいものは使っていて楽しくはなるけれど、宝物ではない。宝物は家族でしかない。家族であり、友人であり。

リリコ:持ち歩いている機能的で美しいものってなんですか? 携帯電話とか?

渡辺:僕が携帯だからねえ(笑)

リリコ:こういう携帯、ほしいですよ!

渡辺:鬱陶しいと思うよ(笑)

リリコ:誰かに言われて忘れられない言葉ってありますか?

渡辺:これはね、昨日もらった。たまたま川口先生と会ってお話させていたんだけどね。「このはやぶさが僕たちに何を残してくれたんですか」と質問したら、海外の科学雑誌がはやぶさの通信途絶のころ書いた記事で、「日本人はこういうインスピレーションを持つ力がある。今、プロジェクトがストップしたとしても、今回の業績が残した大きな意味は、日本人のインスピレーションである」と言われたんだそうです。ものすごく最上級のほめ言葉ですよね。日本はプロダクトすることは得意だ。だけど、インスピレーションをもつということは、すべての原点。それを日本人が持っているということを、世界が認めてくれた。だから、そのインスピレーションをもつために、僕らはもっとフレキシブルで自由で豊かである必要があると痛感したんだ。それってさ、映画を作るのも同じことでしょう? そういうインスピレーションを、生み出すための起爆剤みたいなものを常に自分の中に探し続けなくちゃいけないって、今日1日は目覚めているんです(笑)

[筆者紹介]

LiLiCo

LiLiCo(リリコ)。1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、1989年に芸能界デビュー。2001年からTBS「王様のブランチ」に映画コメンテーターとしてレギュラー出演中。映画俳優へのインタビューをはじめ、「レイトン教授と永遠の歌姫」「シャーロットのおくりもの」などでの声優業、トークイベント、ナレーション、雑誌エッセイなど幅広く活躍している。

このページの先頭へ

最近チェックした履歴

映画の検索履歴

他の映画を探す

映画館の検索履歴

他の映画館を探す

バックナンバー:
LiLiCoのHappy eiga ダイニング

Jobnavi
採用情報