コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第95回
2007年11月7日更新
第95回:続編完成間近!「ナショナル・トレジャー」の製作裏話
「ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記」のフッテージが世界最速で公開されるというので、サンタモニカにあるジェリー・ブラッカイマー・フィルムズを訪問した。
同作は04年のヒット映画の続編で、12月21日の世界公開が決定しているものの、製作スケジュールが大いに遅れているため(なんでも8月にクランクアップしたらしい)、急ピッチで仕上げが行われている最中だという。そんなに大変な状態ならポストプロダクションに専念してくれればいいのにと思うのだが、宣伝的にはそういうわけにもいかないらしく、ジョン・タートルトーブ監督とプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーがフッテージ上映に参加してくれた。
試写室で上映されたのは、ロンドンでの大がかりなカーチェイスやホワイトハウス大統領執務室への侵入劇、「北北西へ進路を取れ!」のクライマックスで有名なラシュモア山での対決シーンなど、ブラッカイマー映画らしいアクション場面の連続だった。また、ニコラス・ケイジ演じる主人公の母親にヘレン・ミレン、悪役にエド・ハリス(ニコラス・ケイジとは「ザ・ロック」以来の共演だ)など新たに加わったキャストも豪華で、前作より確実にスケールアップしていた。
前作「ナショナル・トレジャー」は、ダン・ブラウンの「ダ・ヴィンチ・コード」がベストセラーになっていた最中に公開されたため、根拠のない非難を浴びた、とタートルトーブ監督は振り返る。どちらも陰謀説を軸にした歴史ミステリーのため、「ナショトレ」が「ダ・ヴィンチ」を模倣したと思われたのだ。しかし、タートルトーブ監督によれば、「ナショトレ」は7年間に及ぶ企画開発を経たものだという。
「『ナショナル・トレジャー』をやろうと思った一番の動機は、アメリカ史に根ざした歴史ミステリーを作りたかったからなんだ。歴史をテーマにしたミステリー映画はこれまでにもたくさんあったけれど、物語の舞台は常に外国だったからね」
続編を製作するにあたり、タートルトーブ監督と脚本家チームは、アメリカ史に伝わる陰謀説を片っ端から調べあげ、リンカーン大統領の暗殺に焦点を当てることにしたという。
映画版「ダ・ヴィンチ・コード」への評価が芳しくないなか、続編「ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記」は、作品を正当に評価してもらえるチャンスだとタートルトーブ監督は言う。
「完成に間に合えば、の話だけれどね(笑)」
そう言い残して、タートルトーブ監督は編集室に戻っていった。
筆者紹介
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi