コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第82回

2006年10月3日更新

FROM HOLLYWOOD CAFE
走る筆者の後姿
走る筆者の後姿
nikeplus.comでの各種記録 総走行距離や登録者内でのランキングも表示
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2カ月前、このコラムでNike+iPodについて紹介したところ、友人・知人からかなりの反響があった。健康の話題でこうして盛り上がれるだなんて、自分も年を取ったもんだなあと、ちょっと複雑な心境だった。もっとも多かった質問が、日本での発売時期に関するものだったのだが、それについてはアップルやナイキに直接問い合わせてもらうしかない(現時点でこのサービスが提供されているのは、アメリカ・カナダ・イギリスの3国のみだから、日本語化にはもう少し時間が必要かもしれない)。ただ、前回記事を書いたときは、ほんの数日間しかこのシステムを使っていなかったので、その後、ワークアップを続けるうちに発見したことも少なくない。というわけで、今回はフォローアップを書くことにした。

飽きっぽい自分には信じられないことだけれど、いまだにNike+iPodでランニングを続けている。以前なら、ランニングをした翌日は仕事にならないほどバテていたが、体力がついたのか連日走っても平気になった。なにより、nikeplus.comに記録される個人のワークアウトデータが大きな励みになっている。たとえば、数日間続けてランニングをさぼると、それまで積み上げてきた努力が無駄になってしまうような気がして、たとえば「ディパーテッド」でニューヨーク出張に行くときも、旅行鞄のなかにシューズとiPod nanoを忍ばせた(セントラルパークで2度走った)。こうなるとほとんど強迫観念だが、自分の努力が形となって記録されるのは単純に嬉しい。また、このあいだ1時間半をかけて16キロをなんとか走り抜いたときは、いつもの音声ガイドとは違う、ポーラという女性の声がiPod nanoから流れた。“Congratulations! That's your longest workout yet!”(おめでとう! いままででもっとも長いワークアウトだったわ!)

nikeplus.comでの各種記録 総走行距離や登録者内でのランキングも表示
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イギリス訛りのある声は、あとになって女子マラソン世界記録保持者のポーラ・ラドクリフのものだとわかった。

肝心の体重は、ランニングを始めてから5キロほど減った。1カ月に2~3キロ減っている計算になる。苦労のわりには実りが少ないような気もするけど、食事制限を一切していないので仕方がないのかもしれない。体脂肪率は減っているし、とにかく有酸素運動が減量に効くというのは確かだった。

運動不足と肥満の解消のために始めたランニングだけど、実のところ、いまではその目的が少し変化している。かつてはランニングの単調さを紛らわすために音楽を聴いていたのが、いまでは音楽を聴くためにランニングをしていると言ってもいい。心拍数があがった状態での音楽鑑賞が、なんとも心地良いのだ。ぼくがランニング中に聴く曲といえば、旋律よりもリズムを重視したものが大半で、ダンス志向が強いため反復が多く、音楽的な価値はたぶん高くない。でも、キラーな展開を聴くたびに、涙がこぼれそうになる。ランニングをしている最中は、どういうわけか感受性が高まり、なんにでも感動しやすくなる。たぶん、これがランナーズハイというやつなのだろう。もし、走りながら映画を観ることができたら、どんな作品でも傑作に思えてしまうだろう。

手足を交互に動かすだけで、一体なにが楽しいのか。ランニングをしている人を見かけるたびに、疑問に思ったものだった。でも、いまではそれがわかる。まだそれを知らない人のために、Nike+iPodを一刻も早く日本上陸させてもらいたいものだ。

筆者紹介

小西未来のコラム

小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。

Twitter:@miraikonishi

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