コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第74回
2006年2月6日更新
今年も「24」にはまっている。昨年の同時期に放送された第4シーズンがあまりに素晴らしかっただけに、1月から放送開始の今シーズンには過度な期待は抱いていなかったのだけれど、いきなり意表をつく展開であっという間に引き込まれてしまった。
第4シーズンのオチをばらさずに、第5シーズンの設定を説明するのは非常に難しいのだが、「休業状態にあるジャックが、ある親友の死がきっかけとなって、新たなテロ計画を阻止すべく奔走する」と言っておけばぎりぎりセーフかな? 果たしてどのメインキャストが死ぬのかは見てのお楽しみ。
「24」といえば、サスペンスの連続で視聴者をぐいぐい引っ張っていくことで知られているけれど、最近のお気に入りシリーズである「バトルスター ギャラクティカ」も相当なものだ。同シリーズは、78年にABCで放送された「宇宙空母ギャラクティカ」のリメイクしたもので、アメリカのSci-Fiチャンネルで第3シーズンが放送中だ。
「バトルスター ギャラクティカ」の設定は、「スター・ウォーズ」や「スター・トレック」に、「ターミネーター」をかけあわせたようなものだ。人間が生み出したサイロンというロボットが突然反乱を起こし、人類が暮らす12の植民惑星に総攻撃をしかける。あっという間に人類の大半が死滅し、宇宙船に乗っていたために虐殺を免れた5万人あまりの人間は、唯一生き延びた旧式の宇宙空母ギャラクティカの保護のもと、幻の惑星「地球」を目指し、決死の旅に出るのだ。
サイロンのほとんどは「トースター」と揶揄される不格好な一つ目ロボットだが、なかには精巧に作られた人間型があるという設定が面白い。外見から人間型サイロンを判別するのは不可能で、それが人間たちのなかにスパイとして潜んでいるのだ。その総数は不明で、なかには自分を人間だと信じ込んでいるサイロンまでいて、人間たちをパラノイアに陥れる。結束しなくてはいけないはずの人類のなかで、魔女狩りが始まってしまうのだ。
正直なところ、ぼくはSFファンではない。メカやロボットに胸がときめくことはないし、当然、オリジナル版のテレビ放送を見たこともない。でも、マスコミの評判があまりにも良く、SFファンではない友人たちのなかでもかなり話題になっていたことから、苦い薬を飲むかのように、「バトルスター ギャラクティカ」に挑戦してみた。
たぶん、そのリアルな演出が良かったんだと思う。セットや小物は薄汚れていて古くさく、撮影も手持ちカメラを多用したドキュメンタリースタイル。CGで描かれる宇宙の戦闘シーンでも、ズームを多用するほどの徹底ぶりだ。しかも、絶滅の危機にさらされた人類が主人公だから、生き残りをかけた戦いには嫌でも緊張感がみなぎる。
「バトルスター ギャラクティカ」がぼくを惹きつける最大の理由は、サイロンの目的がわからないことだ。圧倒的な戦力を持ったサイロンたちなら、ギャラクティカ船団を破壊するなどて簡単なことだ。しかし、わざわざ精巧な人間型サイロンを作って潜入させたり、たまに攻撃をしかけては逃げたりする。人類の滅亡を望んでいるのでないとすれば、彼らの目的はいったいなんなのか……。
あれ、やっぱりSF好きなのかなあ。
筆者紹介
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi