コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第66回
2005年6月2日更新
下手に期待してしまったのがいけなかったのかもしれない。前2作と同じクリエイターが同じ条件のもと脚本と監督を手がけているのだから、3作目にしていきなり傑作になる確率なんてほとんどないはずなのに、公開前のあまりの評判の良さに、不覚にも胸を高鳴らしてしまったのだ。
「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」を観たのは、全米初日の5月19日。しかも、日付が変わったばかりの深夜0:05開始のミッドナイト上映だった。チャイニーズ・シアターでの公開がなかったため、今回は近所のシネプレックスで鑑賞することになった。オンラインでチケット購入していたので、のんびりと1時間前に劇場に到着したのだが、そのときはすでにほとんど満席で、最前列しか空いてなかった。しかも、12スクリーンあるシネコンのほぼ全劇場で深夜上映が行われているのである。普段だったらとっくに閉館しているはずの映画館は、ジェダイやストームトルーパーの格好をしたファンでごったがえしている。みんなの興奮が、ぴりぴりと伝わってきた。
しかし、映画が進行するにしたがって、ぼくのテンションは下がっていった。いや、新3部作のなかでは一番よく出来ていると思う。CGはものすごいし、ファンサービスもたっぷり。「エピソード4/新たなる希望」への橋渡しも見事だ。
でも。平坦な演技や不自然な台詞はともかくとして、ぼくが新3部作にのれない一番の理由は、主人公アナキン・スカイウォーカーにまったく共感できないことだ。例えば、最終章となる今作では、いよいよ彼がダークサイドへと渡るわけだが、その理由がストーリー内でいくつか説明されるものの、どれも説得力に欠けるのだ。ネタバレになるから詳しくは書かないが、ぼくにはアナキンが救いようのない愚鈍な若者にしか見えなかった。究極のアンチ・ヒーローとして、アナキンを応援する心の用意は万全だったのに、結局、共感できるところはひとつも見つけられず、ストーリー上で泣くべきポイントもよくわからないまま、映画が勝手に完結してしまったような印象だった。
コアなファンだったら、想像力を駆使して、足りない部分を補いながら楽しむことも可能かもしれないけれど、ぼくには無理だった。どうやらフォースが足りないらしい。
筆者紹介
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi