コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第65回

2005年5月9日更新

FROM HOLLYWOOD CAFE
映画では絶叫しても、 インタビューでは無口?
映画では絶叫しても、 インタビューでは無口?

これまでいろんな人にインタビューをしてきたけれど、まさかパリス・ヒルトンに取材する日がやってくるとは夢にも思わなかった。ゴシップに興味がないぼくでも、パリスの例のセックステープはもちろん、「シンプル・ライフ」で共演したニコール・リッチーといま絶縁中だとか、愛犬の名前がティンカーベルとバンビだとか知っている。彼女はいまや社会現象化しているから、アメリカで生活する限り、嫌でも情報が流れこんでくるのだ。

「蝋人形の館」のパリス(右)
「蝋人形の館」のパリス(右)

映画取材をするぼくと、パーティーをはしごする富豪のブロンド娘との接点は、「蝋人形の館」(9月、渋谷東急ほか全国松竹・東急系にて公開)という新作映画だった。「肉の蝋人形」(53)のリメイク作品で、パリス・ヒルトンが映画デビューを果たしているのである。旅行中の大学生が、片田舎の蝋人形館に足を踏み入れたことから、次々と不幸に見舞われるというスプラッター映画で、パリスはセクシーな女子大生を演じている。ホラー好きではないので、ぼくに作品を評価する資格はないが、パリスの演技に限っていえば、決して悪くなかったと思う。

取材当日、パリスは愛犬バンビを連れてやってきた。テレビやタブロイド誌で見たままのルックスで、初めて会った気がしなかったほどだ。インタビューを開始して、すぐに驚いたのはその口数の少なさだ。一般的にアメリカ人は言語による表現能力が高く、しかも自己主張が強いから、とてもお喋りだ。ひとつ問いかければ、あとはどんどん自分から喋ってくれるから、インタビュアーとしては非常に楽である(もちろん、口数が多いだけで、中身がまるでない場合もあるけれど)。だけど、パリスの場合は、これまでアメリカで取材したどの俳優とも違うのだ。

例えば、こんな感じだ。

画像3

――この映画のなかに、あなたが恋人といちゃついているところを、友人がビデオテープで撮影する箇所がありますよね。あれは、あなたのセックステープのパロディとしてやったのですか?

「もとから脚本にあったの」

――では、あのシーンをやることに抵抗はありませんでしたか? 観客があなたのビデオを連想してしまうんじゃないか、とか。

「セックスビデオなんて、恋人同士だったら誰でも撮るもんじゃない?」

パリス・ヒルトンには不機嫌な様子はなく、無邪気にバンビを撫でながら、一言で返答を終わらせていく。話を広げようという意志がないのか、それとも、その能力がないのかはわからないけれど、これまで取材で出会ったことのないタイプの「俳優」であることは確かだ。ついには質問が尽きてしまって、ぼくは時間つぶしに訊いた。

――いろんなところに旅行してますけれど、どこに行ってもお泊まりはヒルトン・ホテル?

「もちろん」と答えたあとで、パリスは珍しく一言付け加えた。「ベストだから」

筆者紹介

小西未来のコラム

小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。

Twitter:@miraikonishi

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