コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第56回
2004年8月4日更新
サンディエゴで毎年恒例となっているアメコミファンの祭典Comic-Conに、今年初参加した。もともとそっち方面に興味はないのだけれど、ジュード・ロウが主演・製作を手がけた新作「スカイ・キャプテン・アンド・ザ・ワールド・オブ・トゥモロー(原題)」の取材場所として指定されてしまったため、ロサンゼルスからサンディエゴまで片道2時間の道のりを車で行くことになったのだ。
イベントの正式名称は「San Diego Comic-Con Internationa」といって、コミックやアニメファンのための世界最大規模エキシビションだ。出版社やビデオ会社、玩具メーカーなどの大手から、コミック専門の書店やグッズ屋などの小売店がそれぞれブースを構え、広大なコンベンションセンターを埋め尽くす。有名漫画家のサイン会や原画販売、仮装大会などイベントも盛りだくさんである。毎年、このコンベンションにアメリカ全土から7万5000人のGeek(おたく)が集まるというのも納得である。熱気がむんむんとする会場のなかで、違和感を覚えていたぼくだけれど、コスプレ嬢と一緒に映った記念写真を見たら、意外なほど馴染んでいてショックを受けた。ぼくも立派なGeekである。
Comic-Conのもうひとつの魅力は、ハリウッド映画の見本市になっていることだ。近年のアメコミ映画ブームの影響で、ハリウッドの各スタジオはComic-Conでの宣伝に力を入れるようになった。「スパイダーマン2」や「ロード・オブ・ザ・リング」など最近の大ヒット映画のほとんどは、ここComic-Conで新予告編や未公開映像を発表して、大きな話題を作り上げることに成功している。
今年も「スター・ウォーズ エピソード3」のタイトルが正式発表されたのを筆頭に、キアヌ・リーブス主演のSFアクション映画「コンスタンティン」や、クリストファー・ノーラン監督の「バットマン・ビギンズ」、そして、ピクサー最新作「Mr.インクレディブル」の未公開フッテージがComic-Conで初公開された。会場にはコアなファンしかいないから、口コミを広げるには最適の場所なのだろう。
こうした特別イベントが行われるのは、ホールHという6000席ある広大なホールで、1時間ごとにプログラムが変わっていく。出入りは自由なので、望めば1日中座っていることも可能だ。ジュード・ロウの独占取材を別室で終えたあとホールHに入ると、ちょうどロバート・ロドリゲス監督の最新作「シン・シティ」のQ&Aが行われていた。壇上には、ジェシカ・アルバ、ロザリオ・ドーソン、ジェイミー・キングと美人女優が3人もいながら、監督と原作者のフランク・ミラーに質問が集中していたのが、いかにもComic-Conらしい。
その次のプレゼンテーションは、「チーム・アメリカ」だ。トレイ・パーカーとマット・ストーンの「サウスパーク」コンビによる最新映画で、全編「サンダーバード」のような人形劇なのだ。世界初公開のフッテージでは、アメリカの特殊部隊がパリのエッフェル塔を破壊するシーンと、映画の悪役である金正日が国連査察団のブリクス委員長を処刑するシーンが公開された。相変わらずの過激さと、そのあまりものバカバカしさに会場は爆笑の渦だった。トレイ・パーカーとマット・ストーンのトークも相変わらず冴えわたっていて、いつのまにぼくも大声を出して笑っていた。
来年も来ようっと。
筆者紹介
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi