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コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第292回

2018年5月22日更新 小西未来

継続?打ち切り?それとも移籍?アメリカのテレビシリーズ最新事情を徹底解説!

FOXからNBCに“移籍”する「ブルックリン・ナイン-ナイン」 FOXからNBCに“移籍”する「ブルックリン・ナイン-ナイン」 写真:Everett Collection/アフロ

5月11日、CBS、NBC、ABC、FOXからなる米ネットワーク局は、19番組の打ち切りを一気に発表した。翌週からニューヨークで行う「アップフロント」(広告主向けのラインナップ発表会)に合わせた在庫整理とはいえ、たった1日でこれほど多くの番組が消滅することは珍しく、テレビドラマファンのあいだに衝撃が走った。

終了が発表された番組には、昨秋放送を開始したばかりの新ドラマだけでなく、キーファー・サザーランド主演の「サバイバー 宿命の大統領」や、ゴールデングローブ賞受賞の「ブルックリン・ナイン-ナイン」をはじめ、「クワンティコ FBIアカデミーの真実」や「LUCIFER ルシファー」など、ファンが定着している中堅ドラマも含まれている。視聴率不振という市場原理が働いているとはいえ、ここまでの大鉈が振るわれたのは、ネットワーク局がドラマの軌道修正を迫られているからだ。

最大の外的要因は、NetflixやAmazon、Huluなどのストリーミング勢だ。オリジナルドラマ配信に積極的な彼らは、米テレビ界の慣習に囚われずに、独自のタイミングでリリースしている。しかも、盛大に広告を打つから、ネットワーク局の新ドラマは高視聴率でデビューを飾らない限り埋没してしまう。その結果、新番組を立ち上げる際には、人気番組のスピンオフ(「ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則」の前日譚「ヤング・シェルドン(原題)」や「NCIS」シリーズなど)や、有名映画のテレビドラマ化(「リーサル・ウェポン」など)が優先されることになる。よく知られたIP(知的財産)で好発進を狙うスタンスは、フランチャイズ作品を重視するハリウッド映画と同じだ。かくして、ネットワーク局が単純明快で老若男女に受けるメジャー映画的ドラマ、ケーブル局やストリーミング勢がエッジのあるインディペンデント映画的なドラマと、棲み分けができつつある。ネットワーク局が客を呼べないメジャー作品を打ち切るのは当然の流れなのだ。

しかし、既存のIPに依存せずにヒットドラマになる作品もいくつか存在する。2016年に放送を開始した「THIS IS US 36歳、これから」や、17年にスタートしたフレディ・ハイモア主演の医療ドラマ「グッド・ドクター 名医の条件」がそれで、クオリティが高く、かつマーケティングが上手にはまれば、オリジナルでもヒットすることが証明されている(「グッド・ドクター 名医の条件」は厳密には韓国ドラマのリメイクだが、元ネタがあることを知っているアメリカ人はほとんどいない)。

19もの番組が打ち切られた悲劇の日、「THIS IS US 36歳、これから」の企画・制作総指揮を手がけるダン・フォーゲルマンはツイッターを通じて、ハリウッドのテレビ制作者にエールを送った。

「番組が打ち切られると、何百人もの人々が仕事と同僚を同時に失う。1日24時間、週7日間打ち込んでいた仕事が、たった1本の電話で終わりを告げる。はっきり言って最悪だ。ぼく自身もいやというほど経験している。ハリウッドのみんな、今夜のウイスキーはぼくのおごりだ」

そして、以下のように締めくくった。

「Netflixよ、いまこそヒーローになって、みんなを救ってくれ!」

実は、アメリカでは放送(配信)と制作は別のビジネスだ。だから、放送側が打ち切りを決定しても、他局が希望すれば継続が可能となる。これまでもNetflixは「ブル~ス一家は大暴走!」や「THE KILLING」、「The Mindy Project(原題)」などを獲得した経緯があり、現在、「サバイバー 宿命の大統領」を検討しているという。さらにNBCはFOXが放送終了を決定した「ブルックリン・ナイン-ナイン」を獲得に名乗りをあげたため、同番組が継続することになった。ネットワーク局のドラマが以前より厳しい状況に晒されているのは確かだが、放送局/ストリーミング会社の増加により、獲得先が増えるメリットもあるのだ。

[筆者紹介]

小西未来

小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を選考するハリウッド外国人記者協会(HFPA)に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」(http://www.miraikonishi.com)では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。

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