コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第219回

2013年3月29日更新

FROM HOLLYWOOD CAFE

第219回:LAマラソンに参加! 当日の様子をレポート

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先日、「パシフィック・リム」のロングリード取材が、ハリウッドにあるWホテルで行われた。ギレルモ・デル・トロ監督がなにかの事情で大遅刻をして、長い待ち時間ができたので、僕はインタビュー部屋で入念にストレッチをして過ごした。眼下のハリウッド大通りはとっくに封鎖が解かれ、車やバスが行き交っている。そのあたりまえの風景に、前日の出来事が夢のように思えてくる。果たして僕は本当にここを走ったのだろうか?

もっとも、頬をつねらなくても、体中の筋肉が悲鳴をあげているので、夢でないことは分かっているのだけれど。

前日の3月17日、僕はLAマラソンに参加した。ロサンゼルスに暮らすランニング好きにとっては、年に1度の恒例イベントだけど、スケジュールや体調などの事情があって、僕が参加するのは今回でまだ2度目だ。ろくに準備ができないままの参加だったので正直気が重かったのだけれど、とてつもなく辛くて、とびっきり楽しい、今年1番の経験となった。

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LAマラソンの最大の魅力は、ロサンゼルスのど真ん中から太平洋を目指す、その素晴らしいコースにあると思う。スタート地点はドジャースタジアムで、そこからダウンタウンに向かう。チャイナタウン、リトルトーキョーを抜けて、最近おしゃれなエリアとして注目されているシルバーレイクを駆け抜ける。その後、ハリウッドに到達して、ようやく中間地点。そこから、ウエストハリウッドを抜けて、いつも取材で使っているフォーシーズン・ホテル前を走り、ビバリーヒルズのロデオ・ドライブへ。その後は、センチュリーシティのビジネス街や、ブレントウッドの高級住宅地を抜けて、ようやくゴールのサンタモニカに到達する。ロサンゼルスの注目スポットをひととおり網羅しているので、観光客にとってはもちろん、地元ランナーにとってもとても刺激的だ。

沿道のアトラクションもいろいろ用意されている。当日がちょうど聖パトリックの祝日(St Patrick’s Day)だったので、スタート地点ではスコットランドのバグパイプの演奏が行われた。その後、号砲が轟くと、LAマラソンのテーマ曲となっているランディ・ニューマンの「I Love L.A.」が爆音で流れる。スタート後も数キロごとにボランティアの生バンドが待ち構えて、それぞれ異なるジャンルの曲で盛り上げてくれる(なかには、和太鼓やクラブDJもいた)。また、各学校から集まったチアリーダーたちが応援してくれたり、ウエストハリウッド近辺ではゲイの方々が派手なコスプレを披露したり、ランナーを楽しませるための仕掛けが盛りだくさんだ。ゴール近くでは日系の商工会議所のみなさんが応援してくれていた。

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さて、肝心の走りのほうは、前半はペースを抑えたので余裕だったけど、後半は足が痙攣をおこしたため、ひたすら我慢の展開となった。それでも、なんとか歩かずにいられたのは、独特の雰囲気に酔っていたからだと思う。ロサンゼルスはクルマ社会だから、実は多くの人と接触する機会がない。それが、突然2万4000人のランナーと一緒に公道を走り、沿道に埋め尽くした人々の声援を浴び続けたため、気分が高揚してしまうのだ。ゴール近くで涙がこみ上げてきたのも、たぶん苦痛のせいだけじゃないと思う。

あとになってみれば、人生のトップ10に入るくらいの素晴らしい経験ができた。これで、階段を上がれないほどの筋肉痛に襲われなければ文句がないんだけどね。

筆者紹介

小西未来のコラム

小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。

Twitter:@miraikonishi

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