コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第203回
2012年10月29日更新
第203回:ニューヨーク・コミコンの熱気をレポート!!
先週末、ニューヨーク・コミコンに行ってきた。コミコンというと、毎年夏にサンディエゴで行われる世界最大級のコンベンションが有名だけれど、ニューヨークでも2006年から毎年実施されている。主催者が異なるため直接の関係はないのだけれど、コミックやアニメ、ゲーム、テレビ、映画などのファンを対象にしたコンベンションである点はまったく同じで、動員数もついに10万人を超えて、規模でも本家と並びつつある。むしろ、最近のサンディエゴ版コミコンは、ハリウッド大作のプロモーションの場と化してしまっているけれど、ニューヨーク版は開催時期が秋のため、せいぜいドラマのプロモーションくらいしか大きなイベントがない。サンディエゴには大物スターが大挙して駆けつける一方、ニューヨークにはスタン・リーやフランク・ミラー、ケビン・スミス、トッド・マクファーレンといったクリエイターがメインなので、オタク・コンベンションとしての純度は高いといえるかもしれない。
僕の目的は、新ドラマのスタッフやキャストの取材だったので、会場のジャビッツ・コンベンション・センターの玄関をくぐっても記者室に一直線だった。それでも、コスプレの若者たちでごったがえす廊下をぬって歩くだけでも、コミコン気分を味わうことができた。対象がなんであれ、心の底から夢中になれるものがあるのは素晴らしいことだと思うし、コミコンという聖地に全国から結集した彼らが仲間と感動を共有しているさまは、とても微笑ましい。
今回のコミコンでもっとも盛り上がったのは、「ウォーキング・デッド」と「ARROW」のプレゼンテーションだった。「ウォーキング・デッド」はアメコミが原作のゾンビドラマ、「ARROW」もアメコミ「グリーン・アロー」を原作にした新ドラマである。いずれもフッテージ公開とパネルディスカッションを行い、大反響を呼んだ。コミコンの直後に、「ウォーキング・デッド」のシーズン3の放送がスタートしたのだが、初回放送の視聴者数が1090万人とケーブル局のドラマとして史上最高を記録。また、「ARROW」も大ヒットとなり、フルシーズン化することになった。ふたつの番組の大ヒットと、コミコンに詰めかけたオタクたちの鑑識眼&発信力は決して無縁ではないだろう。来年のニューヨーク・コミコンには、次のヒットを狙うドラマが殺到することになるかもしれない。
筆者紹介
小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。
Twitter:@miraikonishi