コラム:FROM HOLLYWOOD CAFE - 第183回

2012年6月4日更新

FROM HOLLYWOOD CAFE

第183回:J・J・エイブラムスの新ドラマ「レボリューション」とは?

ドラマ、映画と売れっ子のJ・J・エイブラムス
ドラマ、映画と売れっ子のJ・J・エイブラムス

この連載を読んでくれている人ならとっくにお気づきだと思うけれど、僕はJ・J・エイブラムスが手がけるドラマが好きだ。だから、どうしても紹介する機会が多くなるわけだけれど、正直に告白すると、「LOST」ほど夢中になれるドラマにはいまだに出会えていない。「FRINGE/フリンジ」も「パーソン・オブ・インタレスト」も「アルカトラズ」もどれも面白いと思うし、実際すべてのエピソードを見ているけれど――他にも見なきゃいけないドラマがあるから大忙しだ――、「LOST」や、それ以前の「エイリアス」ほどには夢中になれずにいる。「LOST」のあたりから、エイブラムスは映画に進出してしまったので、ドラマのほうが手薄になるのも仕方がないと思っている。

そんなわけだから、新ドラマ「レボリューション(原題)」にはあまり期待していなかった。エイブラムスは今、「スター・トレック2(仮題)」の監督に大忙しで、ドラマのほうに深く関わる余裕などないからだ。それでも、テレビ局から送られたパイロット版(第1話)のDVDを見たら、これが素晴らしいできだったのだ。

「レボリューション」は、終末の世界を舞台にしたサバイバルドラマだ。終末モノというと、SF/ファンタジー/ホラーの定番サブジャンルで、核戦争や疫病、災害、エイリアン襲来やゾンビ発生など、世界が崩壊するパターンはさまざまに。

「レボリューション」はちょっと変わっていて、ある日突然、世界で同時に“ブラックアウト”(大停電)が発生し、復旧できなくなってしまう、というもの。テレビや携帯電話はもちろん、車も飛行機も使えない。交通手段がなく、情報伝達もできないから、政府は機能しない。そもそもあらゆるテクノロジーが使えなくなったため、ブラックアウトの原因すら究明できないという、とてもユニークな設定なのだ。

新ドラマ「レボリューション」
新ドラマ「レボリューション」

物語はブラックアウトの15年後で幕を開ける。主人公の少女チャーリー(トレイシー・スピリダコス)は、父と弟とともに小さな村で平和に暮らしている。かつては文明人だった村人たちは農耕と牧畜の自給自足生活を営んでおり、弓の得意なチャーリーは狩りの担当だ。そんな彼らを悲劇が襲う。ブラックアウト後の世界を支配する民兵たちが、チャーリーの父、ベンの強制連行にやってきたのだ。民兵たちによれば、ベンはブラックアウトに関与した容疑者であり、長い期間ずっと探し求めていたのだという。村人たちが抵抗したため、交戦状態となり、父ベンは秘密を抱えたまま死んでしまう。

父の遺言に従って、チャーリーは一度も会ったことのない伯父のマイルスを目指して、長い旅に出る。やがて、彼女はブラックアウトの真相を突き止め、世界に光をもたらすことになる、という展開になるようだ。

壮大なスケールで展開するサバイバルドラマ、個性豊かな登場人物たち、たくさんの興味深い謎と、「レボリューション」には「LOST」的な要素がたっぷり。企画・製作総指揮は「SUPERNATURAL スーパーナチュラル」のエリック・クリプキ。初回の演出は「アイアンマン」シリーズのジョン・ファブロー監督が手がけているだけあって、テレビドラマとは思えないほどの痛快なアクションシーンがある。

もし、第2話以降もこんな感じで展開するなら、お気に入りのドラマになるのは確実だ。秋からの全米放送開始が待ち遠しい。

筆者紹介

小西未来のコラム

小西未来(こにし・みらい)。1971年生まれ。ゴールデングローブ賞を運営するゴールデングローブ協会に所属する、米LA在住のフィルムメイカー/映画ジャーナリスト。「ガール・クレイジー」(ジェン・バンブリィ著)、「ウォールフラワー」(スティーブン・チョボウスキー著)、「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたのか」(エド・キャットマル著)などの翻訳を担当。2015年に日本酒ドキュメンタリー「カンパイ!世界が恋する日本酒」を監督、16年7月に日本公開された。ブログ「STOLEN MOMENTS」では、最新のハリウッド映画やお気に入りの海外ドラマ、取材の裏話などを紹介。

Twitter:@miraikonishi

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